銀行によって「フラット35」の金利が違うのはなぜか?

資産運用

2023(令和5)年3月29日、政府は若い世代の住宅取得や生活にかかる負担を軽減することを目的に、18歳未満の子どもがいる子育て世帯と夫婦いずれかが39歳以下の若年夫婦世帯を対象に、所得制限を設けず長期固定金利の住宅ローン「フラット35」 の金利を引き下げることを発表しました。

「いつから?」「金利の下げ幅は?」「対象となる世帯は?」など詳細については、これからの議論次第となりますが、金利引き下げの対象となるのは新規に住宅ローンを申し込む世帯で、すでに住宅ローンを利用している世帯は「対象外」になるようです。

「フラット35」は、独立行政法人住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)が民間金融機関と提携して提供している「最長35年間金利が固定された住宅ローン」のこと。

完済まで金利が変わらない「全期間固定金利」、住宅金融支援機構が直接貸し付けるのではなく銀行や信用金庫・ネット銀行・住宅ローン専門金融機関などが申し込みの窓口になっている、どの金融機関で借りても借入条件は同じだが申し込んだ金融機関によって金利や借入時の手数料が違う、などの特徴があります。

今回は、フラット35の特徴と注意したい点などについてまとめてみます。

フラット35の特徴について

「フラット35」といえば、完済まで金利が変わらない「全期間固定金利」です。
全期間固定金利とは、将来、経済情勢の変化により市場金利が上昇ても、借入時の金利が完済まで続く。つまり、返済額が借入時と変わらないということになります。

返済期間は、最短で15年(ただし、申込本人や連帯債務者が満60歳以上の場合は10年)、最長で35年間。融資限度額は8,000万円です。
さらに、保証料は0円、連帯保証人も必要ありません。
繰り上げ返済時に返済手数料がかからないのも特徴です。

住宅金融支援機構が提供している住宅ローンなので「どこの金融機関で申し込んでも同じ金利」と思わるかもしれませんが、申し込みをした金融機関によって金利や手数料が違う場合があります。

これは、住宅金融支援機構は毎月金利の「下限」と「上限」を設定するだけで、提携金融機関がその範囲以内で金利を設定しているから。競争原理が働いているために、多くの金融機関は「下限」の金利を採用していますが、異なる場合もあります。

また、事務手数料などの諸費用も各々の金融機関で異なります。
「金利は何%なのか?」「手数料はいくら取るのか?」、金融機関同士の比較は重要です。

参考:50歳からでも遅くはない❗️つみたてNISAの「魅力」と「手数料(信託報酬)」の影響について

デメリットとしては、全期間固定金利であるため、変動金利の住宅ローンと比べて金利が高く設定されています。
また、住宅の取得を目的としたローンであるため、リフォームを目的とした場合は、利用はできません。

フラット35の特徴
・全期間固定金利型
・借入期間は15〜35年間
・融資限度額は8,000万円
・取り扱い金融機関によって、金利や手数料が違う
・一定期間金利が低くなる商品(フラット35S)もある
メリット
・保証料なし、連帯保証人不要
デメリット
・変動型より金利が高い
・リフォーム目的では使えない

なお、住宅金融支援機構が定めている、省エネルギー性、耐震性、バリアフリー性、耐久性・可変性などの基準を満たす住宅は、当初5年または10年の金利0.25%低い「フラット35S」という商品も用意されています。

特に「注意したい」フラット35の特徴

融資率と融資額に注意
上記のようにな、メリット・デメリットがありますが、特に注意しておきたい点が2点あります。
「融資率」「融資額」です。

【融資率】「頭金」が1割以上ないと金利が高くなる

全額住宅ローンで家を買う場合など、融資率が90%を超える(頭金が1割以下)の場合では、金利が上がります。

例えば、4000万円の物件購入を検討している世帯で、自己資金を1000万円用意している場合の融資率は、75%。

3,000万円(借入額)÷4,000万円(購入金額)=75%

これに対し、頭金が300万円用意した世帯の融資率は、92.5%で「9割超え」となります。

3,700万円(借入額)÷4,000万円(購入金額)=92.5%

住宅金融支援機構のホームページの「金利情報」にある、フラット35(借入期間が21年以上35年以下の場合)の金利は、以下のとおりです(2023年5月時点)。融資率によって適用される金利が違うことが分かります。

融 資 率金利の範囲最も多い金利
9割以下年1.830%~年3.090%年1.830%
9割超年1.970%~年3.230%年1.970%
*金融機関同士で競争原理が働くので、多くの金融機関は最低の金利を採用

「9割超」と「9割以下」では、双方の最も低い適用金利の差が14%(1.970%−1.830%)。
住宅ローンは、借入金額が大きく返済期間も長いので、わずかな金利差が大きな支払い額の差になります。

3,000万円の住宅ローンを、返済期間35年、金利1%、元利均等返済で借りたとします。
この時の支払い総額は、3,557万円。支払利息は557万円です。

3,000万円の住宅ローンを、返済期間35年、金利2%、元利均等返済で借りたとします。
この時の支払い総額は、4,174万円。支払利息は1,174万円です。

「頭金不要」をうたっている広告をよく見かけます。
確かに「そのとおり」ではありますが、住宅を購入する場合において、自己資金(頭金)を用意しておくことがいかに大切か、が分かります。
どうしても頭金が用意できない場合であれば、両親等から住宅資金の援助をお願いしてみるのも良いでしょう。

【融資額】「年収」により融資上限額に差がある

最低年収の設定はないが、年収に占める年間返済額に基準がある
フラット35で借入れを行うに当たり、「最低年収」の制限はありません。 
ただし、年収に占める「すべての借入れ」の返済総額の割合(=総返済負担率)が定められています。

年 収400万円未満400万円以上
基 準30%以下35%以下

「すべての借入れ」とは、フラット35による借入れのほか、フラット35以外の住宅ローン、自動車ローン、教育ローン、カードローン(クレジットカードによるキャッシングや商品の分割払い、リボ払いによる購入)などの借入れの総額のことをいいます。

フラット35は最低年収などの制限が無いために、民間の金融機関よりも審査が緩いと言われています。
しかし、フルローン(頭金がない)にすると必然的に総返済負担率が上がるため、借入額によっては審査時に不利になることも考えます。

「住宅ローン」は借入期間が長期間となるため、住宅を購入するときには、年収に見合った返済負担となるよう無理のない借入額を設定することが大切です。

参考:「夫婦で住宅購入」はペアローン一択⁉️住宅購入前に知っておきたいポイントについて

まとめ

フラット35の金利は変動金利より高いが、メリットを理解する
フラット35は、契約から完済時までの毎月の返済額が変らない全期間固定金利なので「返済計画が立てやすい」というメリットがある反面、変動金利に比べると「金利が高め」というデメリットもあります。

ちなみに、フラット35のような全期間固定型と変動型の住宅ローンには、以下のような違いがあります。

参考:どうなる金利⁉️変動金利「2つのルール」を再確認

全期間固定型(フラット35)変動型
特徴・毎月の返済額や総返済額に変化がない
・経済状況が変化しても、金利は上がらない
・ライフプランが立てやすい
・家計管理がしやすい
・金利見直しの検討は「年に2回」
・5年ごとに返済額が改定
・金利見直しの返済総額は従前の1.25倍以内
・固定金利よりも金利が低い
注意点・基本的に他のタイプの住宅ローンよりも金利が高いため、返済の総額が大きくなる
・固定金利期間中に住宅ローン金利が下落していくと契約当初の金利が継続する分、不利になる
・金利変動の影響を受ける
・金利が上昇すると利息分の支払いが大きなり元本が減らない。
・また、金利が大きく上昇すると、未払利息(支払い額が利息分達しない)が発生する

住宅ローンには「固定型」「変動型」があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。

参考:まずは保険を整理して、定年後のお金を準備しよう! 「固定費」削減のポイントについて

今後、子育て世帯の優遇措置を利用してフラット35の利用を考えている人は、金融機関ごとの比較や頭金の準備、そして少し高めの金利に対応するために「家計の体力づくり(固定費の削減)」など、準備をしておくのが良いでしょう。

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ミスター長男50

【プロフィール】

1969年(昭和44年)生まれ
富山県で生まれ、今は千葉県民
・仕事は病院事務(管理職)
・社会保険労務士
・1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)
「仕事」や「お金」に関する法改正や、(定年)退職後や資産形成に関する疑問などを分かりやすくまとめ、発信していきます。

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