2018(平成30)年に「働き方改革関連法」が成立しました。
「働き方改革関連法」とは、「働き方改革関連法」という一つの法律ではなく、労働基準法、労働安全衛生法、労働契約法など、いくつもの法律が対象となって改正が行われたものです。
今回の改正で、いままでの「パートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)」は、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パート・有期雇用労働法)」に改められました。
これにより、短時間労働者と有期労働者の双方を対象に「不合理な待遇の禁止」や「正社員との差別的な取り扱いの禁止」を定め、均等・均衡ルールを統一的に規定する法律となりました。
今回は、「同一労働・同一賃金」を考えるうえで重要なポイントである「均等・均衡待遇」を解説し、会社やパート(短時間労働者)や有期労働者にどのような影響を与えるのかについて、まとめてみます。
同一労働・同一賃金の目的
2016年12月に政府が公表した「同一労働同一賃金ガイドライン案」では、「正規か非正規かという雇用形態にかかわらない、均等・均衡待遇を確保し、同一労働同一賃金の実現に向けて正規、非正規の間の不合理な待遇格差の解消を目指す」と定められています。
要するに、このガイドラインは「均等・均衡待遇を確保し、不合理な待遇格差の解消」を目的としています。
均等・均衡待遇の確保とは
均等待遇
「職務の内容(業務の内容、責任の程度)や人材活用の仕組み(転勤の有無・将来のキャリアパス)が同一ならば、同じ賃金を支給しなければならない」ということ。
均衡待遇
職務内容や人材活用の仕組みなどの違いを、「パートだから」などの抽象的な理由ではなく、合理的な説明ができるのであれば、その格差は違反にならない」ということ。
均等・均衡待遇の確保
・職務内容や人材活用の仕組みが同じなら、同じ賃金を支給する(均等待遇)
・職務内容や人材活用の仕組みの違いがある場合には、それに応じた賃金を支払う(均衡待遇)
このように、同一労働同一賃金は、「同じ仕事をしているから、同じ賃金を支払う」という、単純なことを意味するものではありません。
定年退職後に継続雇用された労働者も対象に
正社員として働いていた社員が、定年後に継続雇用となった場合にも、パートタイム・有期雇用労働法が適用されます。
ただし、定年後に継続雇用となった人の賃金待遇などは、退職金や年金、雇用保険の高年齢雇用給付などの諸事情を総合的に考慮されたうえで、合理的なのか不合理なのかの判断がなされます。
当然ですが、「定年後に継続雇用された」という理由だけで、待遇差を認めるものではありません。
定年後継続雇用となる人には、新たに労働契約を締結する必要があります。
労働契約は、労使双方の合意が必要。定年前と比べ待遇を引き下げる場合は、合理的な説明を行い、納得してもらう必要があります。
会社が注意すべき点
罰則はないが、企業名が公表される
同一労働・同一賃金を定めている、「パートタイム・有期雇用労働法」と「同一労働同一賃金ガイドライン」には、罰則規定がありません。
ただし、違反すれば都道府県労働局長による助言・指導・勧告の対象となり、改善がされない場合は企業名が公表され、世間からは「ブラック企業」認定されてしまいます。
また、不合理な格差があった場合で会社が合理的な説明をできない場合は、パート職員などから損害賠償を請求される可能性も考えられます。
福利厚生・教育訓練についても不合理な待遇を禁止
「同一労働・同一賃金」では、賃金以外にも、会社に食堂、休憩室、更衣室などの福利厚生施設の利用や休職・休暇規定、教育訓練についても、不合理な待遇格差の解消を求めています。
これらも賃金のケースと同様に、正規職員と同一利用・付与を原則とし、合理的な理由があって違いがあるのならば違いに応じた実施を行う必要があります。
まとめ
魅力ある職場づくりを目指す❗️
同一労働・同一賃金の考え方は、職務内容が同じで人材活用の仕組みが同じであれば、同じ賃金を支払い、違いがある場合には、その違いに応じた賃金の支払いを行わなければならないというものです。
正規職員と非正規職員の「賃金格差の問題」は、非正規職員が納得して働けるかは重要なポイントです。
会社は、まず正規職員と非正規職員の「職務内容」や「働き方(キャリアアップ)の違い」を明確にすることです。
次に、非正規職員に勤務年数や実績、さらに将来的な正規職員へのキャリアアップを目指せるなどの制度設計を整備できれば、優秀な人材を確保をすることができます。
会社は、この「働き方改革」に沿って「魅力ある職場づくり」を行うことで、人手不足解消を目指すことも可能です。
同一労働同一賃金には、人件費の高騰という負担(デメリット)があることは、全社員が意識しておくべきです。
厳しい見方をすれば、会社は、健全な企業活動を継続するために、生産性の向上と必要な人件費を正確に把握し、収支バランスを考慮しながら、計画的に人員確保を行うことが求められます。
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