貯蓄から投資へのながれが加速しています。
2022(令和4)年12月、政府は岸田政権の看板政策「新しい資本主義」の実現に向けて、「NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の恒久化や投資枠の大幅拡充を実施する方針を固めた」と報道されました(後述)。
「NISA」を始めるには、NISA口座を作る必要があります。
銀行の窓口でもNISA口座の開設はできますが、取り扱っている金融商品の種類の多さやネット取引などの利便性の良さから、証券会社で口座を開設する人が多いのではないでしょうか?
なお、証券会社でNISA口座(非課税口座)を開設するときは、特定口座(源泉徴収あり・なし)か一般口座を開設する必要があります。
今回は、NISA口座拡充の背景を読み解きながら、証券口座の種類の特徴について、まとめてみます。
新しい資本主義
2022(令和4)年6月、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」が閣議決定されました。
これまでの資本主義では、グローバルな問題が発生したとき、「市場か国か」「官か民か」で揺れ動き、対応が後手になっていました。
しかし、新しい資本主義では、市場だけでは解決できない「大きい社会的課題」については、市場と国家の新しい官民連携によって、その解決を目指していく、としています。
さらに、「資本主義の持続可能性と強靱性を高め、全ての人が成長の恩恵を受けられるようにする」とあり、NISAの拡充は「資産形成を行いやすい環境整備の一環」として盛り込まれています。
証券会社で開設できる口座は3種類
証券口座には「税金の納め方」によって3種類
証券会社で開設できる口座は、税金の納め方によって「NISA口座」「特定口座」「一般口座」の大きく3種類あります。
NISA口座
金融商品から得られる利益に、税金がかからない制度
NISA(ニーサ/少額投資非課税制度)は、株式や投資信託の売却益や配当にかかる税金を一定の制限の元で非課税とする制度です。
NISA口座には、「一般NISA」と「ジュニアNISA」、そして「つみたてNISA」の3種類あります。このうち「ジュニアNISA」は、2023(令和5)年末に廃止されることが決定しています。
なお、NISA口座には、いくつか注意点があります。
まず、「一般NISA」と「つみたてNISA」は、どちらか一方しか利用できないため、どちらかを選択する必要があります。
また、NISA口座で発生する損益は、他の口座(特定口座・一般口座)と損益通算することができません。
損失を翌年以降に繰り越すこともできません。
NISA口座以外の証券口座では、「上場株式などの譲渡損失の3年間繰越控除」として確定申告を行うと、翌年以降3年間損失を繰り越して、利益と相殺することができます。
一般NISA口座
一般NISA口座の上限金額は、年間120万円、非課税期間は5年間、非課税投資枠は5年間で最大600万円(120万円×5年間=600万円)。
非課税期間が終了した後は、保有している金融商品(株式や投資信託)を翌年の非課税投資枠に移す(ロールオーバーする)ことができます。
「ロールオーバー」とは、非課税期間終了後に手続きをすれば、非課税で購入した金融商品を、引き続き非課税枠で保有することができることです。
つみたてNISA口座
つみたてNISA口座の上限金額は、年間40万円、非課税期間は20年間、非課税投資枠は20年間で最大800万円(40万円×20年間=800万円)。
非課税期間の20年間が終了したときには、NISA口座以外の課税口座(特定口座・一般口座)に払い出されます。
つみたてNISAでは、ロールオーバーはできません。
特定口座
「源泉徴収あり」「源泉徴収なし」の2種類
特定口座とは、金融商品(株式や投資信託など)の譲渡損益などを計算し、「年間取引報告書」を作成する口座です。
特定口座には、税金を証券会社が自動的に徴収する「源泉徴収あり」と、報告書を使って自ら確定申告を行う「源泉徴収なし」のいずれかが選択できます。
特定口座(源泉徴収あり)
金融商品の売買で得た利益には、20.315%の税金がかかります。
「特定口座(源泉徴収あり)」では、この支払うべき税金を証券会社が、利益からあらかじめ徴収しておき、本人に代わって支払ってくれるので、確定申告が不要となります。
多くの人は、この「源泉徴収あり」を選んでいます。
なお、「源泉徴収あり」を選んでも、「年間取引報告書」を用いて確定申告を行うことはできます。
これは、多くの場合、株式等の譲渡で発生した損失を翌年以降に繰り越したい場合に行います。
特定口座(源泉徴収なし)
証券会社による、税金の徴収は行われません。
そのため、証券会社が発行する「年間取引報告書」をもとに、自ら確定申告を行い税金を納める必要があります。
複数の証券会社に特定口座を持っている場合は、この「源泉徴収なし」を選択し、自ら確定申告することで、後述する損益の通算を行います。
一般口座
海外転勤が決まった場合は一般口座
「年間取引報告書」は発行されません。一般口座の場合は、確定申告の管理・計算を自ら行う必要があります。
特定口座を開設できるのは、「国内居住者」に限られているため、海外転勤などで1年以上国外で暮らすことになる人は、特定口座を廃止する必要があります。
そのため、特定口座で預かっていた金融商品は、一般口座へ払い出されることになります。
このように、一般口座を開設する人は、なんらかの「事情」がある人といえます。
損益通算とは?
損益通算とは、同一年に発生した「利益と損失を相殺」することです。
金融商品への投資を行って利益(譲渡益や配当など)が発生した場合には、税金がかかります。
一方、損失が発生すると、利益から損失を差し引いた「差分」に税率を乗じるため、支払う税金は少なく済みます。
「損失しか発生していない場合」や、「利益<損失マイナスの場合」は、確定申告を行うことで最長3年間、損失を繰り越して控除することも可能です。
これを「譲渡損失の3年間繰越控除」といいます。
なお、特定口座(源泉徴収あり)では、自ら確定申告を行わないため、そのままでは「譲渡損失の3年間繰越控除」は適用されません。
特定口座(源泉徴収あり)でも、株式の譲渡などで大きな損失があった年には、確定申告が必要となる場合があります。
【例】2つの証券会社に、特定口座(源泉徴収あり)がある場合
同一年に、A証券では100万円の利益が、B証券では50万円の損失が発生出した場合、
それぞれの証券会社の「特定口座(源泉徴収あり)」で源泉徴収が行われるため、損益通算は行われません。
そのため、A証券では税金が203,150円(100万円×20.315%)源泉徴収され、B証券では源泉徴収は行われません(税金は0円)。
結果、納税額は203,150円となります。
しかし、実質の利益は、年50万円(100万円−50万円=50万円)のため、税金は101,575円(50万円×20.315%)ですよね。
そのため、自ら確定申告を行い、A証券の利益とB証券の損失を損益通算することで、多く支払った税金の還付をしてもらう必要があります。
ちょっとややこしいのですが、
特定口座は、「1つの証券会社に一口座」しか開設できません。
そのため、「1つの証券会社に一つの特定口座」しか持っていない人の「損益通算」は、証券会社が行なってくれます。
でも、「1つの会社に一つの特定口座」しかない場合でも、「譲渡損失の3年間繰越控除」を受ける場合は、自ら確定申告を行う必要があります。
【追記】NISA恒久化、投資枠拡充の方針が固まる
2022(令和4)年12月、新聞報道などによると、政府・与党は、2024(令和6)年にNISAを恒久化し、年間の投資枠も拡充することを決定しました。
現行 | 2024(令和6)年1月 | |
---|---|---|
制度が利用できる期間 | つみたて型:2042(令和24)年まで | 恒久化 |
一般型:2023(令和5)年まで | ||
年間投資上限額 | 40万円 | 120万円 |
120万円 | 240万円 | |
非課税となる総投資枠 | 最大800万円 | 最大1,800万円 (うち「成長投資枠」1,200万円) |
最大600万円 | ||
一般型とつみたて型の併用 | できない | 可能に |
まとめ
超低金利政策が維持される日本では、銀行に預けていてもお金は増えません。
そこでNISA口座の非課税制度を利用して「投資」をはじめよう、と考えれいる人も多いのではないでしょうか?
参考:【2024年1月新NISA始まる】NISAのことや今後の変更点、50代からの資産形成について
そういう人は、まずは証券会社で口座を開設しましょう。
証券会社で特定口座を開設する場合
必要な書類等を用意する
「マイナンバー(個人番号)確認書類」
「本人確認書類(運転免許証、各種健康保険証、各種年金手帳、パスポート等)」
「印鑑」(スマホでの口座開設の場合は不要)
「(振込先の)金融機関口座」
口座開設のながれ
①店舗、もしくはインターネットや電話で口座開設申込書を請求する
②申込書に必要事項を記入・署名・捺印の上、必要書類を添えて提出する(インターネットや電話で請求した場合は、書類を返送する)
③審査を経て、口座開設完了
急速な円安により「モノやサービスの値段」が上がっています。
そのため、日本経済の先行きに不透明感がありますが、今回の「NISA制度の改正」は資産形成を考えている人には、非常にメリットのある改正となりました。
老後資金づくりを考えている人や投資を始めようとしている人にとっては、この「NISAの拡充」は、投資を始める良いきっかけになるのかもしれません。
参考:50歳からでも遅くはない❗️つみたてNISAの「魅力」と「手数料(信託報酬)」の影響について
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