日本で生活する人は、「公的医療(年金)保険」に加入することが義務付けられています。
これは「国民皆保険(年金)制度」と呼ばれ、国民の誰もが医療機関で保険証を提示することで医療を受けたり、年金を受けとることができる制度です。
日本政府は、国民皆保険制度を維持することにより、国民に「安全」を提供してるのです。
しかし、近年は急速な高齢化の進展や少子化の影響により、医療や年金にかかる費用が年々増加し、財政がひっ迫。さらに、防衛費の増額や少子化対策費用などを捻出するための財源がないとう有り様…
保険料が上がったり、年金受給年齢が引き上げられたり、制度が改正されるたびに更なる負担が強いられることが多いため、国民は「国民皆保険(年金)制度の持続性」に疑問を抱き始めています。
この加入義務のある「公的保険」に対し、任意で加入するのが「民間保険」。
「民間保険」には、生命保険と損害保険があり、公的保険ではサポートできないリスクに対応したり、公的保険の保障範囲より「広く」「手厚く」することで、加入者に「安心」を提供しています。
今回は、この「安心」を提供している民間保険の種類と役割について、まとめてみます。
公的保険と民間保険の仕組みについて
大別すると公的保険は2種類、民間保険は3種類
日本では、生まれたての赤ちゃんから老人まで、何らかの公的保険(社会保険)に加入し続けることになります。
社会保険には、労働者災害補償保険(労災保険) と雇用保険とを総称した「労働保険」と医療保険、年金保険及び介護保険の総称である「社会保険(狭義)」の2種類あります。
「民間保険」も、保険会社により生命保険と損害保険の2種類に分けられます。
病気・ケガや死亡により、経済的損失を受けた場合に生活をサポートするためあらかじめ定めた金額が支払われるタイプ(生命保険)の商品や、自然災害や事故などで実際の損害額に対して保険金を支払うタイプ(損害保険)の商品が販売されています。
また、「医療保険」や「がん保険」のように生命保険と損害保険の中間に位置する保険は、「第三分野保険」とよばれており、生命保険会社、損害保険会社の双方で商品が販売されています。
参考:人生の「もしも」に備える❗️「がん保険」は本当に必要か?加入を検討すべき人について
日本の社会保険制度
主な社会保険の種類は以下のとおりです。
・病気やケガ:健康保険、国民健康保険、後期高齢者医療制度など
・寝たきりや認知症などの身体・精神上の障害など:介護保険
・老齢、障害、死亡:国民年金、厚生年金など
・業務上などの病気やケガ、死亡など:労働者災害補償保険(労災保険)など
・離職やリストラなどの失業:雇用保険
民間保険の種類
日本の主な民間保険には、以下のものがあります。
・生命保険:生命保険会社が取り扱うもの
死亡や病気などの予期しない出来事で生活の継続が困難とならないように備える保険
・損害保険:損害保険会社が取り扱うもの
日常生活中にある様々なリスクに備える保険
・第三分野:生命保険会社と損害保険会社の両方が取り扱うもの
生命保険と損害保険の中間に位置する保険で、医療保険、介護保険、がん保険などがある
民間保険加入で得られるメリットと注意点について
メリット1:経済的・精神的な安心が得られる
民間保険には、公的保険の補完的な役割を担う商品が多くあります。
民間の生命保険で備えておけば、経済面だけでなく、精神的にも「安心」を得ることができます。
リスク | 公的保険 | 民間保険 |
病気やケガで療養 | ・健康保険 ・国民健康保険 ・後期高齢者医療制度 | ・医療保険 ・障害保険 ・がん保険 |
寝たきりや認知症 | ・介護保険 | ・介護保険 |
老齢・障害・死亡 | ・国民年金 ・厚生年金 | ・個人年金保険 |
業務上などの 病気やケガ、死亡 | ・労災保険 | ・労働災害総合保険 ・就労不能保険(生保) ・所得補償保険(損保) |
また、民間保険の保険料は所得税の「生命保険料控除」の対象となっている商品もあるので、税制上の優遇を受けることもできます。
メリット2:多様なリスクに対応
民間保険は、公的保険では対応できないリスクに対応する商品が数多くあります。
なお、交通事故や火災、地震などの被害(賠償)額は、個人の蓄えで対応できないケースがほとんどのため、民間保険への加入が必要となります。
参考:人生の「もしも」に備える❗️自賠責保険と自動車保険(任意保険)との役割の違いについて
リ ス ク | 保 険 | 保障内容 |
自動車事故 | 自賠責保険 自動車保険 | 自動車による事故において、人や物に対する賠償責任を果たすために加入。 同乗者に対する補償や車の修理などにも対応可能(自動車保険)。 |
火災 | 火災保険 | 自宅が火災で焼失した際の補償。 原則として隣家の火事の飛び火は「免責」であるため、隣家の火事で自宅が消失しても隣家からの補償はない。 |
地震 | 地震保険 | 火災保険の加入が条件。 ”地震による”家屋倒壊や火事による、建物再建築費用を賄う。火災保険金額の30〜50%の範囲内で保険金額が設定。 |
他人に対する賠償 | 賠償責任保険 | 日常生活で他人にケガを負わせたり、他人の財産を破壊した場合に補償。 家を借りる場合の借家人賠償保険が代表的。 |
突然の就業不能 | ・就労不能保険 ・所得補償保険 | 一定の就労不能状態に該当した場合に所得を補填する仕組み。 公的保険による補償がない自営業者やフリーランスには効果が発揮。 |
デメリット:保険商品が多く、見極めるが必要
公的保険や自分の蓄えで対応できるものもある
民間保険は、私たちの生活に多くの「安心」を提供してくれてますが、加入(購入)すればもちろん保険料を支払う必要があります。民間保険会社の保険は「商品」です。
その「安心」は本当に必要なのか?保険料が家計を圧迫しないか?などを見極め、生活と安心のバランスを考える必要があります。
また、公的保険には、高額医療保険制度による払い戻しや、労務不能となた場合に支給される傷病手当金など生活をサポートするものも多くあるため、貯蓄で賄える可能性もあります。
ある程度の貯蓄があれば、民間保険に加入して保険料を支払うよりも、iDeCoやNISAなど他の方法が有利な場合もあります。
参考:人生の「もしも」に備える❗️「傷病手当金」と「所得補償保険(就労不能保険)」の違いについて
人気の都道府県国民共済について
”コスパ最強”とウワサされ最近人気の「都道府県民共済(県民共済)」は、都道府県から認可を受けた全国生活共同組合連合会が運営している保険です。
「共済」は、組合員がお金を出しあって助け合うことを目的として設立されています。
そのため、営利を目的とする民間会社が提供する保険商品より掛金が安く、剰余金がでた場合は割戻金として組合員に還付されるのが特徴です。
また、「県民」となっているのは、利用できるのがその都道府県に住んでいる人となったいるためで、都道府県によって補償内容にも違いがあります。
県民共済のメリットは、その保険料の安さと年齢が上がっても保険料が高額にならない点があげられます。
加入可能年齢 | コース | 掛金 | その他 |
〜17歳 | ・子供保険 | 掛金:月1,000円、月2,000円の2種類 | 過失による第三者への損害賠償も保障 |
18〜64歳 | ・総合保障型 ・入院保障型 | 掛金:2,000〜4,000円 (入院保障型は2,000円のみ) | 総合保障型は64歳まで、以降は熟年型に移行 |
65〜69歳 | ・熟年型 ・熟年入院型 | 掛金:2,000〜4,000円 (熟年入院型は2,000円のみ) | 70歳以上となると保障内容が少なくなり、85歳以降は契約更新ができない |
一方デメリットは、「年齢が高くなると保障内容が薄くなる」、「70歳以上は新規に加入できない」、そして、「保障は一生涯ではない(県民共済の保険期間の上限は85歳)」などがあります。
「高齢になっても保険料が高額にならない」メリットは、裏を返せば若い世代は保険料が高めに設定されているということです。
また、掛金が割安な分、保障される金額も多くありません。死亡保障は多くのコースで上限が1,000万円となっているので、残された家族が生活が賄える分の保障であるのか十分な検討が必要です。
しかし、がん保険などの特約をつけても3,000円程度と低負担ですので、それなりの保障を求める人には「いい保険」と言えると思います。
まとめ
過剰な「安心」を追求することなく、自分に必要な民間保険を選ぶこと
最近は、「国の制度は当てにならない」という風潮もあります。しかし、国の制度が破綻するぐらい悪化するなら、私たちの生活も民間保険会社も破綻していることでしょう。
民間保険は少ない掛金で多くの保障を得られるという点が、大きなメリットです。
すべてを民間保険でカバーするのではなく、事故や病気のとき、公的保険や自分自身の蓄えだけでは賄うことができないケースについては、民間保険を利用するという考え方が大切です。
日本は公的保険より、次のような給付を受けることができます。
・基本的には自己負担は3割
・高額療養費制度により医療費負担には上限あり
・出産育児一時金による出産費用の補助
・出産手当金、傷病手当金による休業時の保障(健康保険のみ)
参考:出産育児一時金と後期高齢者医療制度の保険料増額の影響について
これらの公的保険制度を理解し「自分自身では賄えない保険事故は何か?」を検討したあと、民間保険に加入することが大切です。テレビのドラマやCMを見た直後はもっとも危険です。
「安心」の基準は人によります。その安心が「過剰」かどうかを、しっかり見極めましょう。
また、一度加入した保険商品については「ほったらかし」にすることなく、自身のライフスタイルの変化(就職、結婚、お子さんの進学、マイホーム購入、定年など)に合わせて、定期的に見直しを行うことで、過剰な出費とならにようにしていきたいものです。
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