「失業手当」どう貰う?転職や定年退職でも貰えるの⁇

労働保険

「失業手当」とは、雇用保険の「基本手当」のこと。
失業したら、雇用保険から失業手当(基本手当)が支払われます。失業手当とは、サラリーマンが会社を退職してから次の就職先が決まるまでの生活を保障するためのもので、原則として退職の日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12カ月以上あることが支給の要件となっています。

失業手当の受給期間は、原則1年間。
失業手当の支給を受けることのできる日数の上限は所定給付日数といい、失業したときの年齢や勤続年数などによって異なりますが、受給期間の1年のうちに受け取らなければなりません。

では、転職が決まったあとで退職する人や入社後すぐに会社都合でリストラされた人、または定年退職した人でも、受給することができるのでしょうか?

参考:「内定」が出たらもう社員⁉︎「労働条件通知書」の役割とは❗️

今回は、失業手当をもらうための要件や手続き、給付額や給付日数などについて、まとめてみます。

「失業手当」を受け取れる人の要件

会社を退職し失業手当を受け取るためには、ハローワークで「求職の申し込み」を行う必要がありますが、失業手当を受けるためには「就職に対して積極的な意志があり、いつでも就職する能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない状態」であることが必要です。
そのため、妊娠や病気など理由に退職した人ですぐに働けない状態の人や、定年後に少し休んでから再就職先を探そうとしているなど、退職後すぐに再就職する気のない人は失業手当を受給することができません。「働けない状態」でなくなった時に、申請することになります。

雇用保険の受給期間は原則として離職した日の翌日から1年間
ただし、病気やけがなどの理由により引き続き30日以上働くことができなくなったときは、その働くことのできなかった日数だけ、受給期間を延長することができます。
定年で退職した人は、最長1年間の猶予期間が認められますので、どちらもハローワークで延長申請を行いましょう。

【就職する意思や能力がないとされる状態の例】
・病気やケガのため、すぐには就職できないとき
・妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できないとき
・定年などで退職して、しばらく休養しようと思っているとき
・結婚などにより家事に専念し、就職することができないとき

また、退職の日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12カ月以上あることという要件もありますが、特定受給資格者特定理由離職者に該当する場合では、失業手当の受給要件が「退職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6カ月以上あること」に緩和されます。

特定受給資格者
倒産・解雇等の理由により再就職の準備をする時間的余裕がなく離職を余儀なくされた者
→会社の倒産やリストラなどの会社都合の理由で退職させられた人が該当
特定理由離職者
有期労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新を希望したにもかかわらず、当該更新についての合意が成立するに至らなかった場合
→いわゆる「雇止め」の場合と、「正当な理由のある自己都合により離職した者」「配偶者の転勤についていくため通勤が困難になる」などの場合

退職理由によって異なる給付日数、年齢によって異なる支給額

失業手当は、手続きした人の全てが同じ金額・同じ期間、受給できるわけではありません。退職の理由や年齢、雇用保険の被保険者期間などによって、給付日数が決まります。
自己都合よりも会社都合、雇用保険の被保険者期間が短い人より長い人の方が受給できる日数が長くなります。また、受給できる金額(日額)も若い人より中高齢の人の方が高くなる傾向にあります。

失業手当の給付日数

1. 自己都合退職の場合

被保険者であった期間
/年齢
1年未満1年以上
5年未満
5年以上
10年未満
10年以上
20年未満
20年以上
全年齢90日120日150日
※年齢に関係なく、被保険者期間のみで給付日数が決まる

2. 特定受給資格者・特定理由離職者

被保険者であった期間
/年齢
1年未満1年以上
5年未満
5年以上
10年未満
10年以上
20年未満
20年以上
30歳未満90日90日120日180日
30歳以上35歳未満120日180日210日240日
35歳以上45歳未満150日240日270日
45歳以上60歳未満180日240日270日330日
60歳以上65歳未満150日180日210日240日
※年齢および被保険者期間で給付日数が決まる

3. 就職困難者
就職困難者とは 身体障害者、知的障害者、精神障害者、保護観察中の者、社会的事情により就職が著しく阻害されているなどに該当する人です。

被保険者であった期間
/年齢
1年未満1年以上
45歳未満150日300日
45歳以上65歳未満360日

失業手当の支給日額の上限(令和4年8月1日現在)

賃金日額
賃金日額 =離職日の直前6ヶ月間に支払われた賃金(賞与等を除く)の総額÷180
賞与等とは、臨時に支払われる賃金及び3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金のことをいいます。

失業(基本)手当の日額
基本手当日額 = 賃金日額×給付率
基本手当日額は、賃金日額のおよそ50~80%(60歳~64歳は45~80%)、 給付率は賃金の低い人ほど高い率になっています。

つまり、退職する直前の6カ月の給与の合計を180で割った金額に給付率である50~80%(60~64歳については45~80%)を掛けたものが、1日当たりの支給額になります。
60歳を超えて退職し給料が高かった人ほど、給付率も低くなります。

59歳以下の人で、退職前6ヶ月の給料の総額が約223万円(月額37万円以上)の人が受け取れる失業手当の目安
① 退職前6ヶ月間の給料総額を180日で割る

223万円 ÷ 180日 = 1.2万円
② ①の金額に給付率を掛ける
1.2万円 × 50% = 6千円
6千円が賃金日額になります。

また、賃金日額には、最低限度額と最高限度額が定められています。
最低限度額は一律「2,657円」であるのに対し、最高限度額は退職した人の年齢により異なります。

年齢上限額
30歳未満6,835円
30歳以上45歳未満7,595円
45歳以上60歳未満8,355円
60歳以上65歳未満7,177円
※上限額は、令和4年8月1日現在

失業手当(基本手当)を受け取るための手続き

(1)求職の申込みを行う
退職した人の住所を管轄するハローワークに必要書類を提出して、失業手当を受給するための手続き(求職の申込み)を行います。
「求職の申込み」とは、ハローワークを利用して求職活動を行うための申込みのことをいい「求職申込書」に希望する仕事の種類や収入などを記入し、離職票に本人確認書類及び個人番号カードを添えて提出します。

離職票
会社は、社員の退職後ハローワークへ「被保険者資格喪失届」と「被保険者離職証明書」を提出。その後、「被保険者資格喪失確認通知書」「被保険者離職証明書の本人控」の2種類が離職票として、会社から退職者本人のもとへ郵送されるので、退職した人が離職票を受け取るのは、退職後、約1カ月前後かかります。

(2)待機期間
離職票の提出をして求職の申込みを行ってから7日間の待機期間があります。
なお、この待機期間は全ての人に適用されますが、会社を自己都合で退職した人は、さらに待機期間を経過した日の翌日から2か月間失業手当を受給することができません。これは、「給付制限」といい、待機期間とは別になります

このように、待機期間がある場合などはハローワークで手続きを済ましても、すぐに基本手当が受け取れるわけではありませんので、当面の生活資金の確保は必要です。

給付日数待機期間制限期間(待機期間)
自己都合90〜150日7日2ヶ月
会社都合90〜330日7日なし
*給付日数は、退職理由以外に雇用保険の加入期間や年齢によって判断されます

(3)雇用保険説明会に出席する
雇用保険説明会とは、雇用保険を受給する際、公共職業安定所に求職申込を行ってから第1回目の失業認定日までの期間に受講するものです。
通常は、求職申込日後2~3週間した後に設定され、その際に「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」が渡されます。

(3)失業認定日にハローワークに行く
説明会参加後、失業認定日にハローワークに行き、「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」を提出して失業の認定を受けます。失業認定には、月2回以上の求職活動が必要になります。

(4)失業手当を受給する
失業認定を受ける、失業手当が指定の口座に振り込まれます。原則4週間ごとに認定日が設定され、その都度失業認定を受ける必要があります。

① ハローワークで求職の申し込み(離職票と本人確認書類及び個人番号カードの提出)を行う

② 7日間(土曜日・日曜日・祝日含む)の待期期間
 なお、自己都合退職の場合は、待期期間満了の翌日から2カ月間は給付制限があるため給付なし

③ 雇用保険説明会に出席

④ 毎月(4週間に一度)の失業認定日に出向き、その後約1週間で給付

転職や定年退職した場合でも、失業手当はもらえるのか?

転職や定年退職の場合でも、失業の状態にあると認定されれば、失業手当を受給することはできます。しかし、転職先での勤務状況や定年年齢によって、失業手当を受け取れるかどうかが変わってきます。

❌ 転職の場合、次の転職先から内定をもらうなど、勤務先が決まっている状態では、失業手当は受給できません。

⭕️ 失業手当を受け取れる人は、会社を辞めて失業状態にあり、かつ次の就職先が決まっていない(内定が出ていない)人、また、週20時間未満のアルバイトをしている人などになります。

❌ 定年退職の退職日は、あらかじめ就業規則等で決められており、転職の準備などが計画的にできるはずだと考えられ自己都合になります。

⭕️ ただし、定年で退職した場合には2カ月間の給付制限はなく、待機期間の7日間経過後に基本手当を受給することができます。

⭕️ 定年後に雇用継続されている人が契約満了時に退職する場合は、契約更新の意思が「ある」「ない」に関わらず、定年退職と同様に給付制限なしとなります。

65歳以上で退職した場合、要件を満たすと一時金で「高年齢求職者給付金」が受給できます。
離職理由による給付日数の違いはありませんが、自己都合退職等の場合は待機期間7日の後に2カ月の給付制限がかかります。

高齢者求職者給付の支給要件など

・高齢者求職者給付金の失業認定を行った日に支給決定される
・失業認定は1回限り
・受給期間は離職日の翌日より1年間
・支給額は、被保険者だった期間によって以下のように異なる

被保険者であった期間 1年未満  1年以上 
支給日数 30日分 50日分
※一般の場合と異なり、離職理由による給付日数の違いがない

・支給額は「離職時6ヶ月間の給与の平均額」の50〜80%

参考:定年退職後に再就職!「再就職手当」と「高年齢再就職給付金」はどっちがお得なのか?

まとめ

求職の申込みを行うための「期限」はありませんが、失業手当の受給期間は原則1年間です。
受給期間を越えると給付日数が残っていても打ち切りとなるため、早めの手続きを心がけましょう。特に、自己都合退職など給付制限がある人は、失業認定日から2カ月間失業手当を受給できませんので注意が必要です。

また、待機期間がある場合などはハローワークで手続きを済ましても、すぐに基本手当が受け取れるわけではありません。
病気やケガなど急な退職(失業)も想定されます。日頃から、当面の生活資金を確保しておくことは、必要です。

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ミスター長男50

【プロフィール】

1969年(昭和44年)生まれ
富山県で生まれ、今は千葉県民
・仕事は病院事務(管理職)
・社会保険労務士
・1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)
「仕事」や「お金」に関する法改正や、(定年)退職後や資産形成に関する疑問などを分かりやすくまとめ、発信していきます。

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