社員の不法行為が発覚❗️どうする会社、「解雇」のルールについて

労働法

SNSの普及により、誰でも簡単に情報を発信できるようになりました。
すると、コンビニや飲食店のバイト社員が社内の商品などを使って「度が過ぎる」悪ふざけをSNSにアップするいわゆる「バイトテロ」が問題になっています。

バイトテロが発生すると、世間はその会社に対し「悪いイメージ」を抱きます。
さらに、会社がその対応を「誤る」とさらにイメージの悪化を招くという悪循環も。バイトテロが発生すると「適切な対応」を迫られる会社の負担も、相当なものです。

おそらく、事件を起こしたバイト社員はいわゆる「クビ」になって、雇用契約が解除されていると思われます。
「クビ」とは、懲戒解雇のこと。労働者の重大なコンプライアンス違反などについて懲罰的に行われる最大級の処分です。懲戒解雇は、解雇予告をすることなく即日解雇となるので、退職金も支給されないケースがほとんどです。

また、雇用保険の待機期間についても「重責解雇」の場合は、7日間の待期期間に加えて3か月間が給付制限と基本手当の受け取りが遅くなるという、不利益が生じます。

参考:人生の「もしも」を支える❗️病気やケガで退職したときに行う「6つ」の手続き

労働者にとって経済的なダメージが大きい重い処分であるため、その適用には「厳しいルール」が設定されています。今回は、社員が重大な不祥事を起こしたときの会社の対応について、まとめてみます。

解雇とは

解雇の種類は3種類

会社が、一方的に社員との雇用契約を打ち切ることを「解雇」といいます。
解雇には、労働契約の債務不履行などを理由とした「①普通解雇」、経営上の理由による「②整理解雇」、横領など企業の秩序を乱したことによる「③懲戒解雇」があります。

労働基準法では、労働者の生活を守るため安易な解雇を禁じています。会社が社員を解雇するときは、「相当の理由」「解雇予告」というルールを守る必要があります。

解雇権濫用の禁止

その解雇は、合理的な理由と社会通念上相当か
労働者側に責があるとしても、懲戒解雇になると予告なしの即日解雇となり、退職金も支給されないなど、労働者にとって非常に厳しい処分となります。そのため、労働契約法第15および16条には「解雇権濫用の禁止」を定めています。

労働契約法第15条

使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効となる。

労働契約法第16条

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

解雇にいたった「合理的な理由」については、あらかじめ就業規則に明記しておくことで第三者が見てもやむを得ないといえるような理由を明示しておく必要があります(労働基準法第89条)。
たとえば、傷病による就業困難や、能力不足、無断欠勤、就業規則違反などが挙げられます。

また、労働条件通知書にも「解雇を含む退職に関する事項」を絶対的明示事項として、記載しなければなりません。

参考:「内定」が出たらもう社員⁉︎「労働条件通知書」の役割とは❗️

また「社会通念上相当性」であるかどうかは、労働者が行った行為に対し会社が行った処分が相当であるか(バランスを欠いていないか)というところです。
軽微な就業規則違反を理由にいきなり解雇したり、会社が必要な注意処分や指導といった段階を踏まずにいきなり解雇した場合は、相当性を欠くと判断されることになります。

解雇予告のルール

労働者を解雇する場合には、少なくとも30日以上前に解雇予告を行わなければなりません。即時解雇を行いたい場合であっても、会社は労働者に対しこの予告期間を与える必要があります。

解雇予告をしない場合には、会社は予告に代えて平均賃金の30日分の解雇予告手当を支払わなければなりません。予告期間が30日に満たない場合は、その日数分の予告手当を日割りで支払うことになります。
なお、行政解釈では、「即時解雇であれば少なくともその申し渡しと同時に予告手当を支払わなければならない」とされています。

なお、①産前6週間、産後8週間とその後30日間、②業務上の病気やケガで休業している期間とその後30日間の期間内にある労働者に対しては、たとえ懲戒解雇にあたるような人であっても解雇制限がかかるため、注意が必要です。

悪質なケースには解雇予告除外認定を

「解雇予告なし」で解雇できるケースもある

労働基準監督署長から「解雇予告除外認定」というものを受ければ、解雇予告を行うことなく解雇することが可能です。

解雇予告除外認定とは、災害等のやむを得ない事情で事業を続けられなくなった場合や、解雇の理由が従業員の重大または悪質な行為等によるものである場合に、事前に労働基準監督署長の認定を受けることで、解雇予告をすることなく、労働者を即時解雇することができる制度です。

しかし、従業員の重大または悪質な行為で解雇予告除外認定が認められるには、事件の経緯や就業規則などにある解雇の「合理的な理由」を明示、会社に与えたダメージなどをしっかり説明したうえで、労働基準監督署長の判断を待つ必要があります。

たとえば、横領など会社に与えた損害が明確な行為に対しては、比較的認められやすいようです。
しかし、社外での事件、たとえば「重大事故に至らなかった飲酒運転」や「SNSへの不適切行為のアップ」などは、その行為が会社にどの程度のダメージを与えたかなどの判断に時間が係る場合があるようです。

「減給」にもルールがある

減給は「1日50%まで」と「月10%まで」の2つの範囲以内
懲戒処分には「解雇」以外にも、「減給」という処分もありますが、給料の減額にもルールがあります。

①1日平均賃金の半額まで
減給額の上限は1日平均賃金の半額までと決められています。損害の大きさによって、減給額を増やすことはできません。

②1ヶ月の減給額は賃金総額の10%まで
無断欠勤のうえ飲酒運転をし、当て逃げをして逮捕された場合など、制裁が複数回行われるような事案があれば、減給も複数回行うことも考えられます。
しかし、賃金が大幅に減っていまうと従業員の生活が立ち回らなくなってしまうので、1ヶ月の減給額は賃金総額の10%までと決められています。
控除できなかった金額は、翌月以降に持ち越しされます。

まとめ

日頃からのコンプライアンスを意識した雰囲気つくりが大切
従業員の不祥事が発覚した時点で、会社はすぐに「情報収集」を行うこと。併せて「証拠の収集や保全」を行ったうえで対象となった社員から聞き取りを行うなどして、事実関係を明らかにしていくことが大切です。

情報収集などにより、その不祥事が事実であると判断できたなら会社は不祥事を起こした従業員に対して、刑事告訴や懲戒処分、損害賠償請求など毅然と対応すべきです。
会社の毅然とした態度は、今後の抑止的な効果も期待できるからです。

従業員の不祥事は、不思議と「連鎖」してしまいます。その原因は、管理体制の不備や社員の規範意識の希薄さにあるかもしれません。
普段から、管理体制の構築や運用に力を入れつつ、具体的な事例を用いた社員教育や業務ガイドラインの周知徹底をすることで、社員の規範意識を高めることが何よりの予防策といえるでしょう。

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ミスター長男50

【プロフィール】

1969年(昭和44年)生まれ
富山県で生まれ、今は千葉県民
・仕事は病院事務(管理職)
・社会保険労務士
・1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)
「仕事」や「お金」に関する法改正や、(定年)退職後や資産形成に関する疑問などを分かりやすくまとめ、発信していきます。

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