退職金は「一時金」それとも「年金型」?お得な退職金の受け取り方について

所得税

人生100年時代!
ひと昔前は「新卒で入社し一つの会社を勤め上げ退職金をもらえば、老後の生活はひとまず安泰」って感じでしたが、今では定年年齢や平均(健康)寿命が延びたことにより、いわゆる「老後の期間」が長くなっています。
さらに、少子高齢化の影響で高齢者の割合が年々増えているため、年金や医療・介護を支える社会保障が弱くなってきています。

長くなった「老後の期間」公的年金だけを頼りとするのは不十分。少しでもゆとりのある老後生活を送るためには、退職金にかかる税金を減らして手取り額を少しでも多くしたいところ。

今回は、確定拠出制度を利用している会社の「退職金」の有利な受け取り方について、まとめてみます。

退職金の受取り方を確認する

まずは、自社の確定拠出制度の受け取り方の確認を!

一時金でもらう方がお得!
確定拠出制度などを利用して退職金を受け取る場合には、会社によって「①一時金として受取る(一時金)」、「②年金として受取る(年金型)」、「③一時金と年金を組み合わせて受取る(併用型)」の3つの受取り方があります。
まずは、自分が勤めている会社では「退職金はどのような方法で受け取れるのか?」を調べておきましょう。

なお、確定拠出制度とは、退職金などの資金を会社ではなく従業員自らが運用し、運用実績に応じて給付額が決定する制度のこと。
これに対し「確定給付制度」とは、会社が資金を運用し、従業員は前もって算定された一定の給付金を受け取る制度のことです。

3つの受取り方には、それぞれ「メリット」と「デメリット」がありますが、税金の優遇制度(退職所得控除)をフルに活かせるなら、一時金が断然有利
「フルに活かす」とは、退職金が「退職所得控除額」以内に収まる場合のこと。これなら税金は引かれず、退職金を「満額」受け取ることができます。

勤続年数退職所得控除額
20年以下40万円×勤続年数
20年超800万円+70万円×(勤続年数ー20年)
※勤続年数に1年未満の端数があるときは、1年として計算

退職所得控除額を超える場合は「併用型」

退職金の額が「退職所得控除額」を超える人はどうするか?
その場合は、「併用型」を利用するのが良いでしょう。

「併用型」を選択する場合は、退職所得控除と同じ額の退職金を一時金で受け取り、残りを年金型でもらうようにして税金の負担を少なくします。

確定拠出制度の「年金型」で受け取る退職金は、公的年金(厚生年金・国民年金)と同じように「公的年金等控除」を受けることができます。
そのため、1年間に受け取る年金額が公的年金等控除の範囲内に収まっていれば、非課税扱いとなります。

65歳未満の人の公的年金等控除の額は年60万円。
仮に、定年退職した60歳から公的年金の受給開始年齢である65歳までの5年間、年金型で退職金を受け取れば300万円の控除が受けることができます。

一時金型年金型
所得の種類退職所得雑所得
課税の方式分離課税総合課税
控除の種類退職所得控除公的年金等控除
メリット退職所得控除で税金が安くなる受取り総額が、一時金より多い
デメリット大金を管理する必要がある毎年、課税対象になる
※投資経験がない人は、年金型を選んだ方が安全かも…

65歳以上になると「控除の上限額」が年110万円となりますが、公的年金が支給され始めるので「お得な期間」は60〜65歳までの5年間(300万円)と考えておいた方が良いでしょう。

「併用型」は受け取るタイミングも重要!

一時金の受け取るタイミングをずらす
確定拠出型は、規約に定めがあれば「5年間の有期年金」で退職金を受け取ることもできます。
これは、定年退職を迎える60歳から受給を開始し、公的年金(老齢年金)の受給が始まる65歳までの「5年間だけ」年金型で受け取れるものです。

定年退職を迎える60歳から公的年金の受給期開始65歳までの5年間は、公的年金等控除の空白期間。使わないと最大300万円の控除が無駄になってしまいます。

確定拠出型制度を利用して支給される退職金を「お得に受け取る」ためには、65歳までの公的年等控除の空白期間を利用しない手はありません。

1年間に受け取る年金額は、非課税枠の上限である60万円。5年有期年金の受け取りが終わり、公的年金を受給する65歳になってから確定拠出型の残額を一時金として受け取れば、税金の控除枠をもれなく上手に使うことができます。

確定申告について

もう税金取られているのに、確定申告しないといけないの⁉️

確定申告は基本的には不要
通常、定年退職するときは「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出します。
この申告書を提出しておけば、会社が退職所得控除を適用した上うえで、退職金から所得税と住民税(定年退職した年度分)を差し引いてくれるため、確定申告は不要です。

しかし、3月末など会社が年末調整をする前(1〜12月の間)に定年退職した人は、自分で確定申告をすることになります。

確定申告を行うと「基礎控除」や「生命保険料控除」、ふるさと納税などの「寄附金控除」、また3月分まで支払った「社会保険料控除」など各種控除が適用され、所得税の還付があったり住民税が安くなったりします。

他にも、副業で赤字がある人、医療費控除が年間10万円を超えた人も確定申告をすれば課税所得が減り、還付金を受け取れることがあります。

参考:確定申告‼️医療費控除とセルフメディケーション税制の違いについて

まとめ

安全第一」で考えるのなら「年金型」で!
退職金を「一時金」、「年金型」、「併用型」のどのケースで受け取っても税金には優遇制度がありますが、「年金型」や「併用型」を利用して月々の所得が増えると保険料(健康保険料や厚生年金保険料)」や病院などで支払う「自己負担割合」が増えるケースがあるので、注意が必要です。

公的年金(老齢年金)で老後の生活費がカバーできるならば、「一時金」で受け取る方が、「老後の期間」の税金や社会保険料を低く抑えることができ、医療や介護の自己負担額も少なく済みます。

一方、老後の生活費を公的年金のみでは賄えない方「年金型」または「併用型」で受け取る方が計画的に日常生活を送ることができるため、こちらを利用する方が良いでしょう。

また、「特別にあなにだけ教えます。」的な、いかにも怪しげな投資情報にも注意が必要です。
退職金をもらって気が大きくなっているところに、「絶対に儲かる投資話、教えます」や「元本保証で多額の配当金が手に入る」などの投資詐欺の話を聞くと、何だか本当に自分だけの特別な話に聞こえてくるものです。

そもそも、投資は「増えた」「減った」を繰り返すもの。「元本保証」されるのは利息のつかない銀行に預けるぐらい他人が、わざわざ教えてくれるような、絶対に「儲かる」投資商品は存在しないのです。

一方、その安全と思える銀行からも「投資商品」をお勧めされるかもしれません。銀行からの紹介でも投資商品には必ずリスクがあります。
しかも、銀行から紹介される投資信託には、信託報酬などの手数料が高い商品があり、利益があっても手数料で持っていかれるという、割の合わない商品も少なくありません。

誰しも、虎の子である「退職金」を上手く使って、少しでもゆとりのある老後生活を送りたいもの。
そのためには、怪しげな投資話や高額な手数料を支払う商品に投資し失敗しないようお金に対する知識も必要です。

浪費癖のある人や、投資経験の浅い人の退職金の受け取りは、「年金型」を選んだ方が「長い目」では良いのかもしれません。

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ミスター長男50

【プロフィール】

1969年(昭和44年)生まれ
富山県で生まれ、今は千葉県民
・仕事は病院事務(管理職)
・社会保険労務士
・1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)
「仕事」や「お金」に関する法改正や、(定年)退職後や資産形成に関する疑問などを分かりやすくまとめ、発信していきます。

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