2023(令和5)年4月より道路交通法が改正され、「自転車に乗るすべての人がヘルメットをかぶることに努めなければならない」とされました。
今までも、自転車に乗る機会の多い「13歳未満の子ども」に対して努力義務はあったのですが、今回の改正ではヘルメットをかぶる努力義務の対象を「すべての人」に拡大されています。
これは、自転車事故で亡くなった人の約6割が頭部に致命傷を負っていること、またヘルメット未着用に人の方が致死率が2.2倍高いことが背景にあります(警視庁:「頭部の保護が必要です〜自転車用ヘルメットと頭部保護帽〜」より)。
そこで気になるのが「自転車保険」には加入すべきか?
「自動車保険の特約」などの「個人賠償責任保険」では足りないのか?
今回は、自転車保険と、自動車保険の自動車特約との違いについてまとめてみます。
そもそも自転車は軽車両
免許制度がなく手軽に乗ることができる自転車。最近は、健康意識の高まりなどで通勤に使う人も増えています。
そんな手軽な自転車ですが、実は軽車両としての交通ルールがあり、違反した場合には罰則もあります。
自転車も自動車と同じように、一時停止の標識のあるところでは一時停止、一方通行道路では逆行することはできません。
また、横断歩道を渡るとき歩行者の通行を妨げる場合には、自転車を降りて歩かなければなりません。
自転車保険は必要なのか?
身近な乗り物として人気のある自転車ですが、利用者が増えれば事故も増えるもの。最近の自転車はスピードが出るものも多くあるため、事故が発生すると相手を死亡させてしまうなどの重大事故となってしまうことも…
重大事故になると多額の賠償金が発生することも考えられ、実際に1億円近い賠償金が請求された例もあります。
このようなリスクを回避するために、まず考えるのが「自転車保険」への加入です。
参考:人生の「もしも」に備える❗️2タイプの死亡保険の特徴と選ぶ時のポイントについて
自転車保険の補償内容
「自転車事故に備える」ためには、①被害者への損害賠償(ケガや自転車の破損)と、②自分自身のケガなどについて備える必要があります。
①被害者への損害賠償は「個人賠償責任補償」といいます。
被害者の賠償については、自転車保険以外にも「個人賠償責任保険」でカバーすることができます。
個人賠償責任保険は、自動車保険や火災保険、傷害保険に加入している人ならば特約として付けられる商品があり、一般的には自転車事故の場合も保険でカバーされます。
補償対象は本人以外にも配偶者や同居家族などにも該当することが多いため、家族のだれか1人が入っていれば安心です。
②「自分自身のケガ」などについては、
・通院費用
・入院費用
・手術費用
・死亡・後遺障害
を補償する自転車保険が多いようです。
中には、補償を限定して保険料を抑えている商品もあり、補償内容は保険によってそれぞれです。補償額も医療保険より抑えたものが多いようです。
参考:健康保険証の実力を知る/公的医療保険の3つの特徴と種類、給付内容について
自転車保険へ加入する際には、「相手をケガさせた場合の備え」と「自分への補償」が、すでに加入している保険で足りているのかを検討してからにすると良いでしょう。
また、「本人タイプ」「家族タイプ」など補償対象を選択できる商品もあるので、自分の状況に見合った保険を選ぶことも可能です。
自動車保険、2つの「特約」の違いについて
自転車保険は2015(平成27)年10月、兵庫県で義務化されてから、全国の自治体で義務化が広まっています。自治体が自転車保険への加入を進めている背景には、自転車事故のときに発生する賠償金など、加害者に対し事故で他人を死傷させてしまったときの補てんを求めているためです。
自転車事故に対しては、「自転車保険」以外でも補償してくれる保険があります。
それは、自動車保険のオプションの中にある「自転車特約」や「個人賠償責任補償特約」。
この特約は、自転車事故にも対応してくれます。
自転車特約は、自転車を運転しているときの事故により自分や家族がケガをしたときや、歩行中に他人が運転している自転車との事故により自分や家族がケガをした場合に補償する特約です。
一方、個人賠償責任補償特約は、自転車事故などで他人にケガをさせた場合の損害賠償に備えるための特約です。
自転車保険は、自分や家族を補償する「自転車特約」と、相手をケガさせた場合の損害賠償に備える「個人賠償責任補償特約」を合わせたもの、と考えると良いでしょう。
ただし、補償の内容や金額を限定して保険料を抑えているプランもあるため、加入する時には補償内容が充分か、よく確認することが大切です。
自動車保険の特約に加入することで自転車事故に対応する場合の注意点は、次のとおりになります。
○ 保険金額は充分か?
過去の判例では、自転車事故による賠償金が9,000万円以上になったケースもあります。特約で支払われる金額で十分な補償が受けられるかは、要チェックです。
○ 誰に対して補償する特約のなのか?、内容は充分か?
自動車保険の「特約」は、補償範囲を「相手に損害を与えた場合のみ」に限定していたり、「自分への補償が無い」など、様々です。加入前に補償内容をしっかり確認することが大切です。
○ 自分に対しての補償は充分か?
自治体が条例で義務化している自転車保険は、自身が加害者となったとき、被害者へ損害賠償金を支払うためのものです。自分がケガをした場合には、どの他の保険で補償が受けられるか確認しておきましょう。なお、ケガへの備えは、生命保険の医療特約や医療保険でできる可能性もあります。
○ 家族が起こした事故にも対応しているか?
自動車保険の「特約」によっては、自分だけでなく家族が起こした自転車事故に対しても補償が受けられるもケースもあります。
自動車保険の人身傷害補償保険ではカバーできないか?
人身傷害補償保険と自転車特約
自動車保険の基本的な補償には、「対人補償」「対物補償」などと並んで「人身傷害補償保険」があります。
これは自動車との事故により治療費用などが必要になったときに保険金が支払われるものです。
一般的には契約している自動車に乗車中の事故の場合のみ補償されるものですが、契約している自動車以外の車に乗車中の事故や、歩行中または自転車に乗っているときの自動車との事故に遭った場合にも補償を受けられるものもあります。
ただし、一般的に対自動車の事故であることが補償を受けられる要件となっており、補償される対象が対自動車に限られていることに注意が必要です。
参考:人生の「もしも」に備える❗️自賠責保険と自動車保険(任意保険)の役割と違いについて
自動車保険の「特約」に加入すれば大丈夫か?
上記のとおり、自動車保険に「特約」として個人賠償責任保険を契約している人で医療保険にも加入している人は、自転車保険と補償内容が重複するため自転車保険を別途加入する必要性は低いと思われます。
個人賠償責任保険は、家族全員が補償の範囲になるものも多いため、各自で加入する必要もありません。
なお、補償内容が重複する保険に加入していても、実損分しか補償は行われません。
まとめ
自転車保険は、月数百円程度から加入できる手軽な保険ですが、補償内容を手厚くすればその分だけ保険料は高くなります。
また、せっかく自転車保険に加入しても、実は他の保険の特約やクレジットカードの付帯サービスなどに加入していることもあるので、自分が加入している保険の内容はしっかり確認しましょう。
損害保険は実損分しか補償しません。重複は保険料の無駄になります。
しかし、自転車事故による賠償金が高額になるケースも増えています。
自転車保険への加入する場合は、まず、①自動車保険の「特約」の補償内容で賠償金は支払えるのか? ②補償範囲は充分か? ③補償内容は重複していないか? ④ 加入を考えている自転車保険で足りない補償はカバーできるのか? を十分かを検討してからにしましょう。
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