FIRE(「ファイヤー」Financial Independence,Retire Early)とは、欧米を中心に流行していた考え方ですが、日本でも「経済的自立と早期リタイア」と訳され注目されています。
ファイヤー を実現するには、年間生活費を投資元本の4%に収めることが必要です。
アメリカの一般的な株価の成長率(7%)から物価上昇率(3%)を差し引い出されたこの「4%」は、「4%ルール」呼ばれています。
投資で得られる利益の範囲内で生活を続けることができれば、半永久的に資産が目減りすることなく生活ができるという考え方です。
参考:わたしの老後の年金って「いつから」、「いくら」もらえるの?
ファイヤーを実現するため「4%ルール」を行うのに必要となる資産額は、「年間の生活費の25倍」。年間の生活費が500万円ならば、500万円×25倍=12,500万円。資産は1億2500万円必要です。
この資産(1億2500万円)を年4%で運用(年間運用益500万円)し、生活費も資産の4%以内(500万円)に抑えることができれば、「資産の目減りはない」というものです。
複利とは何か
雪玉(元金)についてくる雪(利子)のこと
企業型DCやイデコなどで「つみたて投資」を行うと、利子にもまた利子がつきます。
投資や預金等で得た収益を元本にプラスした「新たな金額」をさらに運用し、そこから得られる利益を「複利」と呼びます。
元金(もともとのお金)100万円を金利10%(年利)で、1年間預金したとします。
利息が10万円つくので、1年後には110万円になります。この増えた10万円は、元金に対してついた利子です。
この10万円も含めて(つまり「110万円」)再び金利10%で1年間預けると、1年後には120万円となるのではなく、121万円になります。
この「1万円」は、前年の利子である10万円についた利子です。
このように、利子にまた利子がつくことを「複利」といいいます。
複利は、期間が長くなれば長くなるほど、非常に大きな利益をもたらしてくれますよ。
「複利」を利用するということは、利子を元金に組み入れて運用すること。
上記の例では利子の10万円を元金100万円に加え、110万円が新たな元金となります。
これに対して、「単利」は利子を元金に組み入れません。
今度は「単利」で、元金(もともとのお金)100万円を金利10%(年利)で、1年間預金したとします。
単利の場合も複利の場合と同じく利息が10万円つきます。1年後には元利合計で110万円になります。
単利の場合は利子の10万円を元金100万円に組み入れず、100万円を再び金利10%で預けるため、2年目は120万円(100万円+1年目の利子10万円+2年目の利子10万円)になります。
このように、利息を元本に組み込まずに運用する方法を「単利」といいます。
複利と単利、金利「10%」「10年間」で差はいくらになる?
このように、金融商品の運用方式には「複利」と「単利」があり、つみたてNISAなどの投資商品は、複利で運用されいいるものが多数あります。
複利:元本から発生した運用益を元本に加えながら運用し続ける方法
単利:元本から発生した運用益を元本に加えずに運用し続ける方法
元本が増えると、運用益も年々増えていきます。このため、投資期間が長くなれば長くなるほど利益も大きくなります。
複利の計算方法
元本×(1+利率)^n
(n=運用に要する年数)
例:元本100万円を10年間、10%で運用した場合
計算式:1,000,000×(1+0.1)^n
単利の元本 | 年間運用益 | 複利の元本 | 年間運用益 | |
1年目 | 100万円 | 10万円 | 100万円 | 10万円 |
2年目 | 100万円 | 10万円 | 110万円 | 11万円 |
3年目 | 100万円 | 10万円 | 121万円 | 12万円 |
4年目 | 100万円 | 10万円 | 133万円 | 13万円 |
5年目 | 100万円 | 10万円 | 146万円 | 14万円 |
6年目 | 100万円 | 10万円 | 160万円 | 16万円 |
7年目 | 100万円 | 10万円 | 176万円 | 18万円 |
8年目 | 100万円 | 10万円 | 193万円 | 19万円 |
9年目 | 100万円 | 10万円 | 212万円 | 21万円 |
10年目 | 100万円 | 10万円 | 233万円 | 23万円 |
元利合計 | 200万円 | (100万円) | 256万円 | (156万円) |
元本100万円を10%の利回りで「単利」「複利」で運用した際、10年間で得ることができる利益のシミュレーションは、上記のとおりです。
「複利」の場合は、1年目は100万円の元本に対し10万円の運用利益。
2年目の元本は、1年目の利益10万円が加えられて110万円となるので、運用利益も11万円のアップ。
3年目には、2年目の利益11万円が加えられて元本が121万円と、年々運用利益が元本に組み入れられていくので、得られる利益も大きくなっていき、10年後の運用利益は156万円になります。
これに対し「単利」では、100万円の10%のため毎年得られる運用利益は10万円で変わらず同じ。
10年間の運用利益の合計は100万円となり、複利で運用した場合と比べると、▲56万円少なくなります。
「複利の法則」と「単利の法則」とは?
複利と単利について、違いと計算方法を説明しました。
では、「何年がんばって運用すれば、資産倍になるのか?」じつは、これを簡単に計算できる、わかりやすい法則があります。
複利72の法則
資産が2倍になるための必要な期間(年)=72÷金利(利回り)
「72の法則」とは、複利で運用した場合の法則です。
これは72を運用すると金利で割ると、何年でお金が倍になるかがわかるという法則です。
たとえば、ファイヤーの基準となる年利4%で運用した場合は、
【計算式】72÷4(%)=18年
つまり、18年でお金が2倍になるという結果です。
本当に18年で100万円が2倍になるのか計算してみると…
【計算式】100万円×(1.04)^18
=100万円×2.0258…
=約202.58万円
あ〜、本当に理論上は18年で2倍になるんだね。
これを定期預金の金利「0.01%」で実現させようとすると、
72年÷0.01%=7200年
「7200年間」銀行にお金を預ける必要があります。
生きてるわけないっていうか、たぶん銀行も無くなっているよね!
資産を活用させるには、銀行に預けるだけでは効果がないんだな〜
「金利」によってお金の増え方が全然違うんだね…
このように、複利4%で運用し続ければ、18年で資産がほぼ2倍となることがわかります。
これに対して、現在の定期預金の金利である「0.01%」で運用した場合は、7200年。。。
「金利」によって、お金の増え方には大きな差があることが分かります。
さらに、複利は運用する期間が長くなれば長いほど効果は大。つみたてNISAなどで長期運用を考えている人は、「利回り」も重視することが大切です。
単利100の法則
お金が2倍になる期間(年):100÷金利(利回り)
資産を倍になる期間を計算するのに、複利の場合は「72の法則」を使いましたが、単利の場合は「100の法則」を使います。
例えば、金利4%で運用した場合の計算は、
【計算式】100÷4(%)=25年
つまり、単利で「資産が倍」になるには25年必要ってことだね。
「複利」の場合は18年だったから、7年間長くかかるってことか…
なお、反対に100年を年数で割ると、その年数で資産を2倍にするには何%の金利で運用すればいいのかがわかりますよ。
【計算式】100÷25(年)=4%
このような計算式を覚えておけば、「複利」か「単利」か?、金利(利回り)は何%か?、投資期間は何年間か?によって、「将来の資産」に差が出ることがわかります。
まとめ
「複利」と「単利」では、運用期間が長くなれば長くなるほど、将来得られる資産の額の差が大きくなります。また、その金利(利回り)の違いが大きいと「その差」はさらに広がります。
また、「複利の効果」を得るためには長期投資が有効であり、その効果を活用するためには、投資が不可欠です。
2024年から「新NISA」が始まるなど、投資を始めるための環境は整ってきています。
「複利の仕組み」を理解すれば、長期投資が有利であることが分かります。
短期的な価格の変動に一喜一憂するのではなく、長期的な視点で資産運用を行いながら、定年後の生活に備えましょう。
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