健康保険料は「いつ」「どのように」決められているのか?

健康保険

日本では、国民皆保険制度という仕組みが導入されています。
国民皆保険制度とは、日本に住む全ての人が公的医療保険に加入し保険料を納付することで、医療にかかる費用を支え合う制度のこと。

公的医療保険には、サラリーマンが加入する「健康保険」、自営業者やフリーランスの人が加入する「国民健康保険」、そして、原則75歳以上になると加入する「後期高齢者医療保険」の大別して3つの制度があります。

今回は、その保険料が「いつ」「どのように」決まっているのかについて、まとめてみます。

サラリーマンが加入する「健康保険」は2種類

健康保険は会社の規模によって2種類ある
健康保険は、適用事業所で働くサラリーマン(被保険者)とその家族(被扶養者)の病気やケガ、死亡などに対して保険給付を行うもので、会社の規模などによって2種類あります。

全国健康保険協会
(協会けんぽ)
組合管掌健康保険
(組合健保)
適用条件常時5人以上の従業員を使用する事業所など常時700人以上の従業員がいる
事業所など
保険料率3〜13%の範囲で都道府県で決定
平均10%
3〜13%の範囲で各組合で決定
平均は9.21%
保険給付法律に定められた保険給付法律で定められた給付と独自に定めている付加給付
保険者全国健康保険協会健康保険組合
※組合管掌健康保険は、独自に保険料率を設定したり、付加給付を行うことができるので、協会けんぽより保障内容が手厚いところが多くあります

協会けんぽは、全国健康保険協会の略称です。「健康保険組合」を持たない中小企業の従業員が加入する厚生労働省所管の法人で、健康保険法に基づく保険給付の業務などを行います。

健康保険組合とは、企業が単独もしくは同種同業の企業などが集まって設立する公法人のことで「独自の運営」を行うことが可能です。独自の保険料率を設定したり、従業員の保険料負担割合を折半より低くしたり、また保険給付の内容を手厚くするなどを行うことができます。

「協会けんぽ」「組合健保」であっても保険料率はそれぞれで違う

保険料率は、「保険者の財政状況」によってそれぞれ違います。
財政に余裕のある保険者の保険料は低く、その逆は高い保険料率になる傾向にあります。

協会けんぽの保険料率は、3〜30%までの範囲内で各支部(都道府県)が決定しており平均は約10%、都道府県によって差があります。ちなみに、令和4年度で保険料率が最も高かったのは佐賀県の11.0%、最低だったのは新潟県の9.51%でした。
健康保険組合も組合ごとで保険料率が異なり、平均は9.21%。健康保険組合の保険料率の範囲は、協会けんぽと同じ3〜30%です。

では、毎月給料から引かれる保険料はどうやって決まるのか?

協会けんぽも組合健保も保険料は、標準報酬月額によって決まる

毎月給料から天引きされている健康保険料は、会社から支払われる給料を区切りのよい範囲で区分した標準報酬月額と、3ヶ月を超える期間ごとに支給される賞与(ボーナス)のうち千円未満を切り捨てて決定する標準賞与額に保険料率を乗じることによって決まっています。

健康保険制度の標準報酬月額は、第1級の5万8千円から第50級の139万円までの全50等級、標準賞与額の年度累計額573万円が上限です。

被保険者が実際に納める保険料は、労使が折半するのでその半額です。これは「協会けんぽ」「組合健保」とも原則的には同じですが、組合健保は会社側の負担を多くするここも可能です。

また、健康保険の場合は、標準報酬月額の上限該当者(令和4年度の場合は50等級の人)が増えた場合には、政令でその年の9月1日から一定範囲で標準報酬月額の上限を改定することができることになっています。

標準報酬月額
(第1等級〜第50等級)
標準賞与額
(年度の上限額を設定)
上 限1,390,000円
(第50等級)
573万円
(年度の上限)
下 限88,000円
(第1等級)
最高等級については、毎年見直しが行われるので等級数が増減します

なお、40歳以上65歳未満の人は、健康保険料に介護保険料(令和5年分は1.82%)が加わります。

報酬の範囲

標準報酬の対象となる報酬は、基本給のほか、役職手当、勤務地手当、家族(扶養)手当、通勤手当、住宅手当、残業手当など、労働の対償として事業所から現金又は現物で支給されるものを指します。

なお、年4回以上の支給される賞与についても標準報酬月額の対象となる報酬に含まれます。

「標準報酬月額」の決定・変更のタイミング

「標準報酬月額」は、「資格取得(入社)時決定」「定時決定」「随時改定」の3つのタイミングで決まります。

資格取得(入社)時決定

入社時の給与を基準に「標準報酬月額」を決定。徴収は5月から
入社時に支給される予定の給料を元に標準報酬月額を決定します。この標準報酬月額は、その年の8月(6月1日から12月31日までに資格取得した人は、翌年の8月)まで適用され、その後は「定時決定」であらためて標準報酬月額が決定されます。

なお、新入社員や転職してきた人などが初めてもらう給料からは健康保険料は、徴収されません。翌月以降の給与額からが保険料が天引きとなるので、給料の使い過ぎには注意です。

定時決定(算定基礎届)

会社からの給与は、昇給などによって変わります。そのために、会社では毎年4〜6月の3ヶ月間に支給した給料の総額を3で除して標準報酬月額を再計算しており、これを定時決定と呼ばれています。
この時に決定した標準報酬月額は、その年の9月から翌年の8月まで使用します。

「4〜6月の3ヶ月間に残業を多くすると、健康保険料などが高くなる」と言われるのは、この定時決定があるからか!

随時改定(月額変更届)

被保険者の標準報酬月額は、原則として次の定時決定が行われるまで変更はありません。
しかし、定時決定した後にある被保険者の報酬(給与)が昇給・降給など固定給に著しい変動があったとき、被保険者が負担する保険料に不公平が生じてしまします。

このため「著しい高低が生じた場合」には、定時決定を待たずに標準報酬月額を改定することができます。これを随時改定といい、固定給が変更された後に初めてもらった給料から起算して4カ月目(例:4月に支払われる給与に変動があった場合は、7月から)の標準報酬月額から改定になります。

標準賞与額

賞与については、2003(平成15)年4月からは、全ての事業所で保険料が徴収されるようになりました。対象となる賞与は、年3回以下の支給のもので、年4回以上支給されるものは、標準報酬月額の対象となります。

標準賞与額は、税引き前の賞与の支給総額から千円未満を切り捨てて算出します。標準賞与額には上限が設定されており、健康保険では年間573万円(4月1日~翌年3月31日までの累計)となっています。

国民健康保険の保険料は「所得割」と「均等割」

国民健康保険料は6月に決まる
自営業者やフリーランスの人など75歳未満の人は、国民健康保険に加入します。
給付の内容は「健康保険」とほぼ同じですが、原則として「傷病手当金」「出産手当金」は支給されません。
また、健康保険のように「被扶養者制度」がないため、専業主婦(夫)や子どもについても被保険者とされ、保険料の支払い対象となります。

保険料は、市町村ごとに、前年の1月〜12月の所得をもとにした「所得割」と、加入人数をもとにした「均等割」などにより、世帯単位で毎年算出されます。

国民健康保険料は前年の所得状況が判明する6月に決まり、同月中に保険料通知書が送られてきます。保険料を口座振替、納付書で支払う人は、6月から翌年3月まで、10回の納期に分けて納めます。年金からの天引きを希望している人は年6回です。

後期高齢者医療制度の保険料も「所得割」と「均等割」

2008(平成20)年4月より、後期高齢者医療保険制度がスタートしました。これにより、原則75歳以上の人は、高齢者医療保険制度に加入することになりました。
保険者は、都道府県ごとに全市町村が加入する「後期高齢者医療広域連合」です。

また、後期高齢者医療制度も国民健康保険と同じく「被扶養者制度」はありません。加入者全員が被保険者となり保険料を負担します。

保険料は、前年の所得に応じて負担する「所得割」と、保険者全員が負担する「均等割」とを合算した額ですが、健康保険などの被扶養者であった者は、75歳になる前日までの2年間に限り保険料が軽減されます。

まとめ

サラリーマンは副業で収入アップを
一般的には、国民健康保険料の方が保険料の負担が重くなりがちです。
国民健康保険料は所得をベースにしてるため、必要経費などの控除額を見直すことができれば所得が少なくなるので納める保険料も少なくなるかもしれません。

所得 = 収入 ー 控除(必要経費)

健康保険に加入しているサラリーマンの健康保険料は、源泉徴収されているので控除額(必要経費)を増やなどの調整はできませんが、副業により給料以外の収入を増やすことはできます。

参考:働き方改革❗️副業・兼業時のセーフティネットはどうなっているのか?(社会保険編)

サラリーマンが副業・兼業などで会社以外からの収入を得ることは、年々負担が重くなる社会保険料への対応だけでなく、「定年後」の生活設計においても大変魅力的です。
「働き方改革」の議論の行方については、注意を払ってを見守り、流れに乗り遅れないよう行動する準備が必要です。

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ミスター長男50

【プロフィール】

1969年(昭和44年)生まれ
富山県で生まれ、今は千葉県民
・仕事は病院事務(管理職)
・社会保険労務士
・1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)
「仕事」や「お金」に関する法改正や、(定年)退職後や資産形成に関する疑問などを分かりやすくまとめ、発信していきます。

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