年金保険料は何歳まで払えばいいの?何歳からいくらもらえるの⁇

公的年金

突然ですが、厚生労働省によると、2021(令和3)年の日本人の平均寿命は男性が81.47歳、女性が87.57歳。「60歳で定年」と考えると、男女とも20年以上もあるため、老後の生活の支えでもある年金は重要です。

一方で老齢年金が受給できるのは、原則65歳からと定年から年金支給開始まで5年間もあります。
また、日本の年金制度は、自身の保険料を積み立てて運用する「積立方式」ではなく、若者が高齢者を支える「仕送り方式」になっているので「支えてが少なくなっても、年金って本当にもらえるの?」と思っている人も少なくありません。

でも、そこは安心してください!
年金の財源は、私たちが支払う「保険料」の他にも、政府が支払う「国庫負担」と保険料のうち年金の支払いに使われず余ったお金を積み立てた「年金積立金」によって、支えられています。
この年金積立金の残高は、2022年3月時点で約190兆円。平均利回りが3.38%、運用益が約98兆円の利益があります(運用実績2001〜2022年度)。

日本の年金財政の基盤は意外と強く、国が破綻しない限り、年金はもらえます。
また、65歳で老齢年金を受給した場合、支払った保険料はだいたい10〜11年で回収が可能。それ以降に受け取る年金は「自分が支払った保険料以上の受取り額」になります。

今回は、老齢年金の仕組みや、収支がトントンになるのは何歳なの?などの疑問について、まとめてみます。

老齢年金とは

老齢年金とは「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」のこと
老齢年金には、国民年金から支払われる「老齢基礎年金」と、厚生年金から支払われる「老齢厚生年金」があります。

国民年金は20歳から60歳までの日本に住む全員が加入する年金で、保険料は一律、受け取る年金も保険料を40年間を満額支払った場合では一律、保険料に未納期間などがある場合は、支払った保険料に応じた分が支払われます。
厚生年金は会社員や公務員が加入するもので、保険料・受け取る年金も受給に加入している人の給料によって差があります。

国民年金の老齢基礎年金を受けるには、保険料を納めた期間などが10年以上であることが必要。
一方、老齢厚生年金は、老齢基礎年金を受け取ることができれば、厚生年金保険の加入期間が1カ月でも老齢厚生年金が支給されます

自分の年金の種類は?保険料いくらなの?

「老齢年金」は、働き方や保険料納付期間によって給付額が決まります。
日本に住む全ての人が加入する「国民年金」では、働き方によって以下の3つに分類されています。

自営業者やフリーランス、または求職活動中や無職の人

自営業者など会社に雇われていない人は、国民年金の「第1号被保険者」と呼ばれます。
2022(令和4)年度の保険料は、「月16,590円」保険料」や「受け取れる年金」は、毎年1月末に見直しがされます。65歳以降に受け取れる年金は、「月64,816円」で受け取る年金は「老齢基礎年金」です。

サラリーマンや公務員の人

イメージは国民年金と厚生年金の2階建て
サラリーマンや公務員などは「厚生年金」の被保険者となると同時に、国民年金の「第2号被保険者」となります。入社した時に2つの年金に加入しているイメージですが、国民年金保険料を別途納める必要はありません。国民年金保険料は厚生年金保険料に含まれています。

厚生年金保険料は、給与やボーナスから天引きされており、保険料率は18.3%
ただし、全額を個人で負担しているのではなく半分は会社が負担してくれるので実質の負担は「9.15%」また、第2号被保険者が徴収された保険料の一部は「拠出金」として国民年金に支払われています。

65歳以降に受け取れる年金は、「1階部分」の基礎年金と「2階部分」の老齢厚生年金の合計となり、厚生年金は「給料と働いた期間」によって異なります。
収入が多い人ほど支払う保険料が多くなりますが、その分受け取る年金も多くなるという仕組みです。

サラリーマンや公務員の配偶者で専業主婦(夫)の人

第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者は、「第3号被保険者」です。
本人は直接保険料を納める必要はなく、65歳以降は「1階部分」の老齢基礎年金「月64,816円」を受け取ることができます。

保険料給付額
第1号被保険者
(自営業者など)
月16,590円月64,816円
(1階部分)
第2号被保険者
(サラリーマンなど)
給与等から18.3%
(実質9.15%)
「月64,816円」(1階部分)
+納めた保険料に対応した額(2階部分)
第3号被保険者
(専業主婦(夫))
なし月64,816円
(1階部分)

参考:年金は自動的にもらえるの?「老齢年金」の受取りと「繰上げ・繰下げ」の手続きについて

結局、「いくら払って」、「いくらもらう」ことができるのか

国民年金の場合

令和4年度の国民年金の月額保険料は16,590円。この保険料を40年間(480ヶ月)支払うと、
16,590円×480ヶ月=796万3,200円

65歳から受け取れる老齢基礎年金は、年間77万7,800円。

男性の平均寿命が82歳(81.47歳)なので、年金を受け取れる期間は17年(82歳ー65歳=17年)。

77万7,800円×17年=1,322万2,600円
1,322万2,600円÷796万3,200円=1.6604…
一方、女性の平均寿命が88歳(87.57歳)なので、年金の受取期間は男性より長く23年

77万7,800円×23年=1,788万9,400円
1,788万9,400円÷796万3,200円=2.2465…

受け取る年金の平均は、男性で1.66倍。女性が2.25倍。男女とも損するどころか、だいぶ得するよ!

収支(払った保険料ともらう年金)がトントンになるのは、

796万3,200円÷77万7,800円=10.238…

だいたい10年だね!

厚生年金の場合

仮に、20歳で入社して60歳で退職した場合のサラリーマン歴は40年(480月)。
平均月収が40万円、年2回もらえる賞与の合計が120万円だったとすると、
・標準報酬月額:41万円
・標準賞与額:60万円(1回分)

受け取った報酬を年間を平均すると、41万円×12ヶ月+120万円=600万円
600万円÷12ヶ月=50万円(平均標準報酬額)

生涯に支払う保険料は、
41万円×18.3%×1/2(労使折半)×480ヶ月(40年)=約1,800万円
60万円×18.3%×1/2(労使折半)×80回(40年)=約439万円
合計で約2,239万円になるでしょう!

これに対し、65歳から受け取れる年金は①老齢基礎年金と②老齢厚生年金の合計なので、

①老齢基礎年金=77万7,800円(令和4年度)

②老齢厚生年金=50万円×5.481/1000×480月(40年×12月)=約131万5,000円

①+②は209万2,800円。年間受け取れるが年金は、約209万円です。

平均寿命から、男性が年金を受け取れる期間は「17年」

209万円×17年=3,553万円
女性は「23年」

209万円×23年=4,807万円

生涯受け取る年金は、男性で1.59倍。女性が2.15倍。国民年金と大きな差はないですね。
男女とも損するどころか、だいぶ得しますね。

収支(払った保険料ともらう年金)がトントンになるのは、

2,239万円÷209万円=10.712…

厚生年金の場合も国民年金と同じく、だいたい10年でしょう!

そうか!

65歳で年金を受け取り始めたら国民年金も厚生年金も10年ぐらい受け取れば、トントンになるんだね。

しかも、公的年金は「終身」で受け取れるため、長生きすればするほど年金は多く受け取ることができます。

年金を「繰上げ」や「繰下げ」受給した場合はどうなる?

国民年金・厚生年金とも、年金は原則65歳から受け取ることができますが、手続きをすれば受給を60歳から受け取ったり、75歳まで受け取りを遅らせたりすることができます。
早く受け取ることを「繰上げ受給」、逆に遅く受け取ることを「繰下げ受給」と呼び、「繰上げ受給」は受給を1ヶ月早めると0.4%受給額が減額に、「繰下げ受給」は1ヶ月あたり0.7%受給額が増額します。

参考:繰上げ・繰下げルールが改正‼️失敗しない老齢年金の受取り方について

60歳で受給を始めた場合の年金額

60歳に繰上げ受給の申請をすると、受け取る年金額は▲24%減額(0.4%×60ヶ月)します。
国民年金の場合は、
77万7,800円×▲24%=59万1,128円
65歳から受け取る場合と比べると、年間▲18万6,672円減額になり、その減額は一生涯続きます。

この場合、「受取る年金」と「支払う保険料」の収支がトントンになるのは、
796万3,200円÷59万1,128円=13.471…になるので、約13年以上

繰上げを行うと受け取る年金は減額になるから損するけど、73歳(60歳+13年)まで受け取ればトントンになるね。
でも、繰上げ受給すると減額された年金が一生涯支給されることになるよ。
65歳で年金を受け取った場合と比べると、年金総額は80歳10ヶ月で逆転されるよ。

参考:繰上げ・繰下げルールが改正‼️失敗しない老齢年金の受取り方について

70歳から受給を始めた場合の年金額

2022(令和4)年より、繰下げられる年齢の上限が75歳まで延長されました。
繰下げ受給を申請し、75歳から年金の受け取りを始めると、年金額は184%増額(0.7%×120ヶ月)します。
国民年金の場合は、
77万7,800円×184%=143万1,152円
65歳から受け取る場合と比べると、年間65万3,352円増額となります。もちろん、増額は一生涯続きます。

この場合、「受取る年金」と「支払う保険料」の収支がトントンになるのは、
796万3,200円÷143万1,152円=5.564…になるので、5年以上
先ほどの「繰上げ受給」をした場合と比べると、受け取れる年金が増えるため、収支がトントンになる期間が「8年以上短縮」になります。

「繰下げ受給」をした場合だと、収支がトントンまで「5年間」とだいぶ短くなるね。年齢的には80歳までだね。

男性の平均寿命とほぼ一緒になのから、男性が75歳まで「繰下げ」を考えている人は、自分の健康状況もよく考えるべきだな。

まとめ

年金は「お得」な制度だが、この先は…⁈
このように、平均寿命を基準に考えると年金制度はお得な制度であり、決して「払い損」になるものではありません。「老後生活収入の柱」となる頼りになる存在です。

参考:わたしの老後の年金って「いつから」、「いくら」もらえるの?

しかし、日本の年金額は、「マクロ経済スライド」という仕組みに基づいて決められています。マクロ経済スライドとは、日本の社会情勢(現役人口の減少や平均余命の伸びなど)に合わせて年金給付額が調整される仕組み。この仕組みによって、年金の「所得代替え率」は少なくなるでしょう。

「所得代替え率」とは、65歳から受け取る年金額が、現役世代の手取り収入額(ボーナス込み)と比較してどのくらいの割合になるかを示すものです。
たとえば、「所得代替率50%」といった場合は、そのときの現役世代の手取り収入の50%を年金として受け取れるということになります。

ゆとりある老後生活を送るには、準備が必要です。「長く働く」「副業など別の収入を確保する」「受給開始を遅らせる(繰下げ支給)」などの収入を増やすプランだけでなく、支出を見直すことも大切です。特に、住宅費や民間の保険、スマホ代などの固定費を減らすのが有効ですよ。

参考:定年後の資金づくりは保険の整理から⁈「固定費」削減のポイントについて

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ミスター長男50

【プロフィール】

1969年(昭和44年)生まれ
富山県で生まれ、今は千葉県民
・仕事は病院事務(管理職)
・社会保険労務士
・1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)
「仕事」や「お金」に関する法改正や、(定年)退職後や資産形成に関する疑問などを分かりやすくまとめ、発信していきます。

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