病気やケガで働けなくなった時の「社会保障」や「民間保険」について

労働法

突然の病気やケガで働けなくなったら、どうしますか?
「民間の保険の保険商品に加入しているから大丈夫」という人も多いと思いますが、日本の社会保障制度は手厚く最低限の生活を送るための仕組みが用意されたいます。
その代表が、「傷病手当金」と「障害年金」です。

しかし、「自営業者」は加入する公的保険の保障額が少なく、民間の保険に入った方がいい人もいます。

今回は、会社員と自営業者の社会保障の内容や金額の違いや、自営業者が働けなくなった時の保障の考え方などについて、まとめてみます。

会社員と自営業者の社会保障の違い

会社員が病気やケガで働けなくなった時には、まず有給休暇を利用します。
多くの会社員の有給休暇は40日間。厚生労働省の「令和2年 患者調査」によると、退院患者の平均在院日数は32.3日であり、さらに1週間自宅療養を送ったとしても、有給休暇でカバーできそうですが、自営業者には有給休暇はありません。

また、会社員は「健康保険」や「雇用保険」、「厚生年金保険」に加入している人が多く、その分毎月の保険料は高いですが、手厚く保障されています。
一方、自営業者は「国民健康保険」、「国民年金」に加入しますが、会社員に比べると保障内容が薄いため仕事ができない期間は、自力で収入減に対応する必要があります。

会社員自営業者
病気やケガで休業したとき傷病手当金(健康保険)
・給料の3分の2相当額
・支給期間:最長1年6ヶ月
給付なし(国民健康保険)
仕事を辞めたとき失業(基本)手当(雇用保険)
・給料の45〜80%(上限あり)
・支給期間:90〜330日
給付なし
病気やケガで後遺症が残ったとき障害基礎年金(国民年金)

障害厚生年金(厚生年金)*
障害基礎年金(国民年金)
※障害等級3級以上の障害が残れば、障害厚生年金が単独で支給される

ちなみに、病院に支払う自己負担額が高額になった場合、その支払う金額に上限を設定する「高額療養費制度」は、健康保険にも国民健康保険にも用意されています。

参考:入院にかかる費用っていくらなの?高額療養費制度について

傷病手当金とは

「傷病手当金」は、サラリーマンが加入する「健康保険」より、病気やケガで連続して3日以上仕事を休んで給料が受け取れないときに支給される制度です。
1日当たりの支給金額は、「支給開始前12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した額 ÷ 30日 × 2/3」で算出され、休業の4日目から支給開始。標準報酬月額とは、会社から支払われる給料を区切りのよい範囲で区分したもので、健康保険の場合は50等級に分けられています。

受け取れる期間は、休業の4日目から支給が始まり、通算して1年6ヶ月です。

傷病手当金は、要件を満たしていれば退職した後も受け取ることができます。
その要件とは、退職(資格喪失)の日の前日まで被保険者期間が継続して1年以上あり、被保険者の資格喪失日の前日に、現に傷病手当金を受けているか、病気やケガで連続して3日以上仕事を休んで給料が受け取れない状態であれば、資格喪失後も引き続き支給を受けることができます。
なお、「病気やケガで連続して3日以上仕事を休んでいる」いわゆる「労務不能期間」は、医療機関を受診し医師の指示により適切な治療等が行われて療養している期間のことを指します。そのため、退職後も傷病手当金をもらうためには、
①「会社を退職する前に初診日」があり、
②「退職日も含んで最低4日間の労務不能期間」、が必要となります。

ただし、ここで⚠️気をつけたい点が2つ!
退職日に出勤した場合は、その時点で「職場復帰」と判断され傷病手当金の受給が中断してしまうので、退職後に継続して受給することができなくなります。
また、支給期間は「支給開始日」から1年6カ月の範囲ですが、退職後に働けるようになった場合は、その時点で受給権が消滅します。

⚠️仕事中のケガや病気についは、健康保険を使えません。
この場合は、労災保険から休業(補償)給付が支給されます。
自営業者の人で労災保険に特別加入していない人は、国保健康保険を使うことになります。

参考:労災保険は縁の下の力持ち❗️労災事故時の手続きや給付・補償内容について

失業手当とは

会社員は、雇用保険に加入しているので、病気やケガが原因で仕事を続けることが困難な状態になったとき、雇用保険から失業(基本)手当を受け取れます。

自己都合で退職し失業した場合は、ハローワークで求職の申込みをしたあと通常2ヶ月の待機期間がありますが、病気やケガの療養が原因で会社を退職した場合には、「正当な理由のある自己都合退職(特定理由離職者)」として待機期間なしで、失業手当を受けられる可能性があります。

なお、病気やケガで特定理由離職者となった人の所定給付日数は、90~150日間です。

参考:「失業手当」どう貰う?転職や定年退職でも貰えるの⁇

被保険者であった期間
/年齢
1年未満1年以上
5年未満
5年以上
10年未満
10年以上
20年未満
20年以上
全年齢90日120日150日
※年齢に関係なく、被保険者機関のみで給付日数が決まる

自営業者やフリーランスは、生活資金を確保しておくする必要あり

障害年金の支給要件にも差がある
病気やケガにより障害の状態になり「障害年金」の支給対象となった場合にも差が生じます。
自営業者は国民年金に加入しているので、2級以上の障害等級に該当した場合は障害基礎年金を受け取ることができますが、会社員は、国民年金と厚生年金に加入しているので、厚生年金分が上乗せして支給されます。

また、国民年金は障害等級2級以上に該当しないと障害基礎年金が支給されませんが、厚生年金は3級に該当すれば障害厚生年金が支給されるところも「差」になります。

つまり、「会社員」と「自営業者やフリーランス」では加入している社会保険(もちろん、そのために負担している金額も)が違っているため、保障金額に差が生じています。
自営業者などは、仕事を休めばその間の収入はゼロ、退職金もでないため、特に子育て中の世帯の生活資金は会社員と比べて、不足しがちです。

病気やケガに備えるには?

病気やケガに備えるには、まずはお金を貯めること。つまり、貯金することです。
よく「生活防衛資金は生活費の〜6ヶ月分が目安」と言われていますが、必要となる金額は人それぞれだと思います。仮に6ヶ月分だとすると、夫婦二人の1ヶ月あたりの生活費の平均は約25万円なので、150万円が一応の目安となります。

しかし、子育て世帯などの場合では、この金額では心許ないかもしれません。万が一の時の生活に不安がある人は、民間の保険に加入するという選択もあります。
「所得補償保険(就労不能保険)」は、病気やケガで働けず収入がないとき、保険金を毎月受け取ることができます。


保険金が受け取れる条件保険料の支払期間保険の目的取り扱う保険会社
所得補償保険病気・ケガ1年、2年など短期間ケガや病気で働けなくなった場合の収入減少を補う損害保険会社
就業不能保険病気(精神疾患含む)・ケガ60歳、70歳までなど長期間生命保険会社

参考:病気やケガで働けなくなったら…所得補償保険や就労不能保険、収入補償保険には加入すべきか?

所得を補償する保険であるため、もともとの収入を上回る補償を受けることはできません。また、他の保険商品と補償内容が重複していると、満額の保険金が受け取れない場合があります。
さらに、「故意や過失」などによる病気やケガ、「うつ病やむちうち」など客観的にな診断が難しい病気、「妊娠や出産」では適用されないケースがあるので注意してください。

保険契約時には、契約内容をしっかり確認しておきましょう。

まとめ

会社員が病気やケガで働けない状態となった場合には、まず「有給休暇」があります。さらに、傷病手当金が支給されるなど、手厚い保障が用意されています。

一方で、自営業者やフリーランスの人が病気やケガで働けない状態となった場合は、すぐ「収入減」となってしまうため、傷病手当金の代わりとして所得補償保険(就労不能保険)を検討してみるのが良いと思います。
もちろん、貯蓄の状況や年齢、家族構成などによっても、必要な保障額は違ってきます。

参考:iDeCo(イデコ)ってどうやって始めるの?イデコの仕組みや注意すべき点について

まずは、仕事ができないなどのアクシデントがあったときには、現状どのくらいの期間までなら「貯金で生活することができるのか」を、客観的に評価してみることが大切です。
そのうえで、「当面の生活費が足りない」という判断になれば「貯金を増やすのか」か「保険で賄うのか」という手順を追って、保険に加入するならを選択すれば、るようにすれば良いでしょう。

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