健康保険から支給される「傷病手当金」について

健康保険

2022(令和4)年1月より、「傷病手当金」の支給期間の考え方が変更されました。最長で1年6ヶ月という期間には変更はありませんが、その数え方が変わりました。

改正前は、「支給日から起算して暦日で1年6ヶ月が経過」すると打ち切りとなっていましたが、法改正後は「支給を開始した日から通算して1年6ヶ月」に変更されました。

通算であれば、病気療養中に「リハビリ出勤」をして傷病手当金が支給されない期間があったとしても、傷病手当金の受給期間には影響がないので、安心してリハビリ出勤することが出来そうです。

ガン治療のため両立支援を受けている人にとっても良い制度改正です。

両立支援とは
治療と職業生活の両立のことで、病気を抱えながらも、働く意欲・能力のある労働者が、仕事を理由として治療機会を逃すことなく、また、治療の必要性を理由として職業生活の継続を妨げられることなく、適切な治療を受けながら、生き生きと就労を続けられることです。
(独立行政法人労働者健康安全機構ホームページより抜粋)

今回は、「傷病手当金」についてまとめてみます。

傷病手当金の支給要件は?

無給の状態で連続3日間の待機期間が必要
傷病手当金は、健康保険の被保険者が病気やケガのため「連続して3日間(土日・祝日、有給休暇も含みます)仕事を休んだあと、4日目以降の仕事に就けなかった日に支給されます。

ただし、仕事を休んだ期間に会社から傷病手当金より高い「手当」などの報酬を受けている場合は、傷病手当金は支給されません。
病気には、医師が労務不能な状態と判断すれば「うつ病」などの精神疾患や通院で自宅療法の場合も含まれます。

支給要件は、以下のすべて満たした場合です。

業務の事由による病気やケガで療養中であること
 →【業務中】の病気やケガの場合は、労災保険から同様の手当が給付されます
・医師が仕事に就けない状態であると認めていること
・連続する3日を含む、4日以上仕事を休んでいること
・給料の全部または一部が支払われていないこと
 →支払われた給料が傷病手当金以下の場合は、その差額が支給

参考:労災保険は縁の下の力持ち❗️労災事故時の手続きや給付・補償内容について

傷病手当金はいくら支給される?

1日当たりの傷病手当金の金額は、支給開始前に被保険者期間が1年以上ある人ならば、休業前1年間に支給された給料の2/3程度が支給されます。

支給開始日の以前12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3

被保険者期間が1年未満の人については、①か②のどちらか低い方になります。

① 支給開始日の属する月以前の直近の継続した各月の標準報酬月額の平均額
② 傷病手当金の支給開始年度の前年度の9月30日における全被保険者の標準報酬月額の平均額

なお、協会けんぽにおける令和5年度の平均額は「30万円」になります。

健康保険における標準報酬月額とは、従業員の月々の給料を1~50の等級(厚生年金は1~32)と区切りのよい幅で区分して分けて表すもので、毎月徴収する健康保険や厚生年金の保険料を算出したり支給額を決定する際に利用しています。

たとえば、標準報酬月額が30万円(第22級)の人の場合では、300,000÷30日=10,000円
10,000円が標準報酬日額となります。

支給される傷病手当金の額は、
10,000円×2/3=傷病手当金の日額 6,667円が支給されます。

参考:給料から天引きされる保険料は「いつ」「どのように」決めているの?

傷病手当支給期間中に臨時で仕事を手伝い会社から傷病手当金以上の給与が支給された場合には、傷病手当金は支給されませんので、注意⚠️してください。
支給額が傷病手当金より少ないときには、その差額が支給されます。

支給期間は令和4年1月から変更あり

支給期間が暦日から通算に変更
傷病手当金の支給期間は「支給を始めた日から起算して1年6ヶ月間」と暦日で期間を決めていましたが、2022(令和4)年1月より「支給を始めた日から通算して1年6ヶ月間」に変更となりました。

これは、ガン治療など定期的に入退院を繰り返す必要がある疾患では、治療以外の期間が長くなってしまうことに対応するためです。
「通算」となったことで、仕事を続けながら治療を行う人に対しても、同じ間のサポートをすることが出来るようになりました。

参考:「ガン保険」って入っておいた方がいいの?加入を検討すべき人について

もうすぐ「定年退職」になる人にも、傷病手当金は支給されるの?

傷病手当金の支給期間中に定年退職を向ける場合でも、
① 退職日の前日まで被保険者期間が継続して12ヶ月以上あること
② 資格喪失日の前日までに傷病手当金を受けている、または3日間の待機期間が終了し受けられる状態にある
以上の場合は、(引き続き)支給を受けることができますよ。

退職後も継続して傷病手当金をもらう予定ならば、退職日当日には絶対に出勤しないこと⚠️

なぜなら、退職日に出勤してしまうと、「労務不能」と見なされず傷病手当金の受給が中断してしまうからです。
「退職の挨拶」などをするのであれば、退職日より4日以上前に行うか、退職後にすることをおすすめします。

参考:定年退職後の「健康保険」3つの選択肢について

まとめ

「心身とも健康に過ごす」ことは、最も大切な資産
健康保険や共済組合の被保険者にとって傷病手当金は、「病気やケガで収入が途絶えたとき」に頼れるセーフティーネットですが、「給与の全額が保障されるわけではない」「申請から支給までに一定の期間要する」など、気をつけたい点があります。

さらに、治療中は医療費を支払う必要もあるため、貯金などの「備え」は必要です。
「備え」の目安は、一般的に生活費の3ヶ月分と言われています。
自営業者やフリーランスが加入する国民健康保険には傷病手当金の制度がないため、サラリーマン以上に「備え」は重要です。

参考:病気やケガで働けなくなったら…所得補償保険や就労不能保険、収入補償保険には加入すべきか?

預金が出来ていない場合は、民間保険の「所得補償保険(就労不能保険)」の加入を検討する必要があるかもしれません。「3ヶ月分の生活費の確保」を一応の目安にして、民間保険への加入を検討することをおすすめします。

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ミスター長男50

【プロフィール】

1969年(昭和44年)生まれ
富山県で生まれ、今は千葉県民
・仕事は病院事務(管理職)
・社会保険労務士
・1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)
「仕事」や「お金」に関する法改正や、(定年)退職後や資産形成に関する疑問などを分かりやすくまとめ、発信していきます。

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