日本人の平均寿命は年々延び続け、男女ともに80歳を超えています。
現役引退(仕事を辞める)年齢を65歳とすると、それ以降の平均余命は男性が20.05年、女性が24.91年(「令和2年簡易生命表」厚生労働省)。
妻が専業主婦であった世帯だと、夫が先だったあとの5年間は、妻の老齢(基礎)年金のみで生活しなければなりません。
参考:わたしの老後の年金って「いつから」、「いくら」もらえるの?
公的年金に不安を感じている人には、もう一つの年金として税制上のメリットを受けながら老後資金作りができる「iDeCo(イデコ)」が役立ちます。
iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)とは、確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金制度。
私的年金のため加入は任意ですが、掛金、運用益、そして給付を受け取るとき、税制上の優遇措置が講じられています。
今回は、イデコの仕組みや始め方などについて、まとめてみます。
イデコの仕組みと3つの節税効果
公的年金を完補する「確定拠出年金(DC)」は、掛金の運用先を自分で選ぶ私的年金制度で、運用成績によって将来受けとることができる金額が増減します。
「DC」には、企業が毎月拠出する掛金を従業員が運用する「企業型DC」と個人が任意で加入する「個人型DC」があり、このうち個人型DCがイデコと呼ばれています。
イデコは、5,000円から1,000円単位の掛金で始めることができるうえ、いつでも休止・再開できるので、無理のない範囲で積み立てができるのも魅力です。
加入できるのは、原則20歳以上65歳未満の人。なお、65歳まで加入できるのは、国民年金第2号被保険者と国民年金の任意加入被保険者の人などに限られますが、より長い期間運用できるようになりました。
2022(令和4)年からは、企業型DCとイデコの併用が可能となり加入できる人の範囲が広がったこともあり、50代から「老後の資金づくり」を始める人にとっては「つみたてNISA」と同様に魅力的な選択肢なっています。
参考:50歳からでも遅くはない❗️つみたてNISAの「魅力」と「手数料(信託報酬)」の影響について
イデコは「掛金」「運用益」「給付を受け取るとき」の3つの場面で節税効果を得ることができます。
① 掛金を積み立てているときは「所得控除」
掛金の全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象となます。
所得控除とは、所得税の額を算出する際に「収入」から「必要経費」を引いて残った「所得」から、一定の金額を差し引く(控除する)ことができる金額のことです。
毎月1万円の積み立てをしている人の場合だと、所得税・住民税がそれぞれ10%であった場合、年間2.4万円(1万円×20%×12ヶ月)の税金が軽減されます。
② 運用益も非課税で再投資
通常、投資している金融商品などの値上がりや配当、利息などの運用益には、20.315%の所得税が課税されます。
しかし、イデコなら非課税で再投資されるので、効率良く複利の効果を期待することができます。
③ 受け取るときも節税効果
イデコは満期になると「年金」か「一時金」、またはイデコを運用している金融機関にもよりますが「年金と一時金の併用」のいずれかを選んで受け取ることができますが、受取時に課税されます。
しかし、イデコの受取時には「公的年金と同様の優遇措置」があり、年金として受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金として受け取る場合だと「退職所得控除」の対象となります。
ちなみに、60歳からイデコを「年金」として受け取り始めた場合だと、65歳までに最大300万円の節税が可能です。
参考:退職金をお得に受け取る!退職所得控除の「5年ルール」と確定拠出年金の「19年ルール」とは?
⚠️イデコは「金融機関」選びが重要なポイント
イデコを始めるには、自分で金融機関を1社選んで口座を開設する必要がありますが、ここで注意が必要です。
金融機関ごとに取り扱っている金融商品や手数料に違いがあります。
金融機関を選ぶときの注意点としては、①選んだ金融機関に自分が運用したい商品があるか、②運用中のサービスは充実しているか、③手数料はいくらなのかなどをよく比較検討する必要があります。
金融機関選びの注意点
① 金融機関ごとに取り扱っている商品が違います。自分が運用したい金融商品があるかどうか、比較検討しましょう。
② 金融商品や運用方法など分からないときなど、金融機関のサービスが自分に合っているかを事前に調べておくことも大切です。
③ イデコ口座には、毎月の管理手数料などの費用が発生します。手数料なども金融機関によって異なります。
イデコの取り扱っている金融商品や運用の方法について
商品の特徴や運用方法も確認!
イデコ口座を開設した金融機関にある金融商品ラインナップから、自分の運用方針に合った金融商品を自由に組み合わせて運用します。
また、運用の状況次第(思ったような利益が出ない、赤字が続いているなど)によっては、選んだ運用商品の変更(組み換え)を行う必要もあります。
元本確保商品と投資信託
誰しも投資を行うからには、リターン(収益)を大きくすることを求めたいところですが、大きなリターンを求めるとリスク(収益の振れ幅)も大きくなり、リスクを小さくすることを求めると、リターンも小さくなります。
金融商品を選ぶ際は、その商品が「元本確保商品」なのか「投資信託」なのか、投資信託であればその運用方法についても押さえてておきましょう。
元本確保商品
原則として、元本が確保されている金融商品のことで、定期預金や保険商品が該当します。
あらかじめ定められた所定の利息が上乗せされますが、日本はいま超低金利時代。利息が超低くなっています。
管理手数料が高く設定している金融機関では手数料が利息額を上回ってしまう場合があります(損する場合があるってこと)ので、注意が必要です。
投資信託
投資信託とは、投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する商品。
イメージするなら、日本の株式会社やアメリカの株式会社、または世界中の株式会社ごとに投資のプロが「株の詰め合わせセット」をつくって、証券会社で販売しているものです。
投資信託ごとに決められている運用方針に基づいて専門家が運用を行い、その運用成果が投資家それぞれの投資額に応じて分配される仕組みです。
投資信託の運用成績は、市場環境や経済情勢などの様々な要因によって変動します。元本が保証されている商品ではないので、損をする可能性もあります。
投資信託の運用方法について
投資信託の運用方法には、大きく分けると2つのタイプがあります。
パッシブ型
市場平均(日経平均株価など)と同じ動きを目指す運用方法。
専門家の手間が少ないので手数料(信託報酬)が低く抑えられていますが、市場平均が下がれば運用もマイナス(損)になります。
アクティブ型
専門家(投資のプロ)が独自の調査に基づいて売買を行い、最終的には市場平均(日経平均株価など)を上回る収益を目指す運用方法。
しかし、必ずしも市場平均を上回る収益が約束されているわけではなく、積極投資が裏目にでることが多々あります。
また、手数料(信託報酬)が高いというデメリットもあるので「慎重」に商品を選んでください。
イデコ掛金の加入区分による上限(拠出限度額)について
イデコは加入区分によって、拠出できる掛金の上限金額が異なります。イデコを始める前に、自分がどの加入区分に属しているのかを把握する必要があります。
まとめ
2024年12月からイデコの掛金拠出額が変わります
イデコで扱われている投資信託(商品)の多くは、購入手数料がかからず、信託報酬も一般で販売されているものと比較してコストも低く設定されているので、初めて投資をするという人にもおすすめです。
また、2024年12月からは、確定給付企業年金(DB)に加入している人の掛金が現在の12,000から20,000円に引き上げられ、より多くの人が利用できるようになります。
ただし、他の制度の掛金と通算されるので、DBおよび企業型確定拠出年金(企業型DC)の掛金額との合計が5.5万円が上限となります。
しかし、イデコは投資、運用リスクは個人で負うことになります。また、必ず利益を生むことを保障する制度ではありません。
イデコの注意すべき点としては、以下の点に注意があります。
イデコの3つの注意点
・原則60歳までは引き出せない
・投資なので、運用で損をする可能性がある
・加入時や運用時など口座の維持に手数料がかかる
「つみたてNISA」との一番の違いは、「60歳まで引き出せない」こと。
イデコは年金なので、一旦始めると60歳まで引き出すことができません。毎月の貯金ができていない人はまず自分の生活費を把握し、生活資金をイデコ(投資)に回さないことが大切です。
参考:定年後の資金づくりは保険の整理から⁈「固定費」削減のポイントについて
イデコのメリット・デメリットを理解し、自分のスタイルに合った金融商品を選び、ストレスの少ない投資を長く続けることを心がけましょう。
コメント